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センバツ21世紀枠・三島南の「脱高校野球」 ICTで効率的練習+数値化、打撃フォームをスマホ撮影するワケ

posted2021/02/15 11:02

 
センバツ21世紀枠・三島南の「脱高校野球」 ICTで効率的練習+数値化、打撃フォームをスマホ撮影するワケ<Number Web> photograph by Jun Takagi

バッティング練習の動画をチェックする監督と選手。三島南の取り組みは“普通の学校”にも参考になるかもしれない

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間淳

間淳Jun Aida

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Jun Takagi

 学習時間の確保を優先した限られた練習時間。私立や強豪校のように室内練習場はない。時間も設備も十分とはいえないからこそ、徹底的に無駄を省く。そして、考える。創部100周年を迎えた静岡県三島市にある県立三島南高校は、21世紀枠で春夏通じて初めての甲子園切符を手にした。

 昨年秋の県大会では、準々決勝で甲子園常連校の静岡高校を3-1で破り、62年ぶりに準決勝へ進んだ。ほかにベスト8に入ったのは、私立5校と練習設備が整っている伝統校の静岡と浜松商業。人材や環境面で優位な高校と互角に戦うため、三島南は効率を追い求める。

 稲木恵介監督が目指すのは「脱高校野球」。監督自身がやりたい練習があっても口にせず「時間も設備も制限されている分は、意識でカバーする。選手主体で考えて練習した方が効果は高い。大学生に近い野球ですね」と話す。

3つの班に分けてローテーション

 勉強との両立を目指し、平日の練習は2時間で、全体練習は水曜日しかない。27人の部員を3つの班に分けてトレーニングメニューをローテーションで回し、効率化を図る。

 限られた時間には工夫が詰まっている。2カ所で同時に行われるフリー打撃。ケージの隣には、スイングを撮影するカメラと、映像を映し出すモニターが置かれている。

 リアルタイムでスイングを確認する目的だが、ここにひと工夫されている。再生に40秒の遅延をかけているのだ。

 6球1セットを終えた打者がモニターへ向かうと、巻き戻しせずにそのまま自分の映像を見ることができる。

 修正点を確認した選手は再び打席へ。映像をチェックしている間は、別の選手がフリー打撃をするローテーションを組んでいるため、待機時間はゼロ。時間や動きに無駄がない。伊藤侍玄(いとう・じげん)主将(新3年生)は「映像を見ると自分のイメージと結構、違うことがある。映像で確認した修正点を、次のセットのフリー打撃ですぐに反映できる」と効果を口にする。

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