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イチローは智辯和歌山で何を教えたのか 日本ハムのドラフト4位・細川凌平が授かった極意とは?

posted2021/01/18 11:03

 
イチローは智辯和歌山で何を教えたのか 日本ハムのドラフト4位・細川凌平が授かった極意とは?<Number Web> photograph by KYODO

50m5秒8の俊足が武器の細川。プロでの目標に盗塁王を掲げる。イチローは「スタートで全部決まる」と助言

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石田雄太

石田雄太Yuta Ishida

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 指導者としてのイチローを迎えた智辯和歌山に、51番のウエアを着ている選手がいた。昨年秋のドラフトでファイターズから4位で指名された俊足巧打の細川凌平は、ずっとイチローに憧れてきた。

「保育園の頃から大好きで、イチローさんのようになりたいと、中学のときから51番をつけていました」

 1年夏、2年春夏と3季連続で甲子園の土を踏んだ細川は、力強さと巧さを兼ね備えたバッティングで存在感を示した。プロを見据えてセンターからショートへ転向した最終学年、智辯和歌山は中止されたセンバツに出場するはずで、夏も和歌山大会を制しながら甲子園大会は行われず。5季連続で甲子園の土を踏む資格を得ながらそれが叶わなかった細川は、少ない実戦の中で力を蓄えてきた。彼を担当したファイターズの林孝哉スカウトがこう言っていた。

「細川は1年、2年、3年と、その伸びしろがこちらの予想を遥かに超えてきたんです。見るたびによくなっていた。もちろん、ショートで勝負してもらいたいと思っています」

ショートをやりたい気持ちはあるが、愛着はない

 そのショートへのこだわりを「愛着」という言葉を使って細川に訊くと、彼はこんなふうに反発してきた。

「いや、愛着とかはないです。ショートをやりたい気持ちはありますけど、愛着はありません。別にセンターに愛着があったわけでもないし、自分にあるのは、任されて、やると決めたポジションを守る覚悟だけです」

 試合に出られるならどこのポジションでも構わない――細川の言葉からは強い気持ちが滲み出る。智辯和歌山を指導したとき、バッティング練習を披露したイチローは細川と交互に打った。外野の林を超えていくイチローの打球の飛距離を目の当たりにした細川は、こう言っていた。「イチローさんは『バッティング練習ではバットが返るまで返さず、ボールを乗せてから引っ張って、遠くへ飛ばすことを意識している』と仰っていました。自分の今の課題は、結果を欲しがってバッティングが小さくなるところだったので、練習ではバットを返さない感覚のまま、しっかり振ろうと思いました」

 練習でバットを強く振れる状態にしておくからこそ、試合で強いスイングができる。そんな極意を授かった細川は、イチローからもらったバットを手にプロの世界へ飛び込む。

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