第97回箱根駅伝出場校紹介BACK NUMBER

拓殖大学は2区のエースを生かせるか。7年ぶり出場の専修大学は「着実に」15位が目標。

posted2020/12/17 11:00

 
拓殖大学は2区のエースを生かせるか。7年ぶり出場の専修大学は「着実に」15位が目標。<Number Web> photograph by JMPA

箱根駅伝予選会を全体1位でフィニッシュした拓大・ラジニ(左)。専大は2年生・高瀬桂が調子を上げている。

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箱根駅伝2021取材チームhakone ekiden 2021

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今回で97回目を数える東京箱根間往復大学駅伝競走。新型コロナウイルス感染拡大により異例のシーズンとなったが、2021年1月の箱根路では21チームが1年間の鍛錬の成果を競う。大混戦が予想されるなか、各チームの駅伝監督の戦略を紐解く。

拓殖大学

第97回箱根駅伝予選会:9位
第96回箱根駅伝(前回大会):13位
8年連続、42回目

Head Coach of the TEAM:山下拓郎

故障者、ハイペース……想定外でも予選通過できた要因。

文=和田悟志

「前半はもう少し抑えていく予定だったんですけど、行きすぎてしまった。残り5kmはハラハラしましたね」

 10月の箱根駅伝予選会、上位10校に与えられる本大会出場の切符をかけて、拓大は5km通過が4位、10km通過は3位と上々の滑り出しを見せた。

 だが、山下拓郎監督は一抹の不安も覚えていた。拓大といえば“粘り”が信条。後半にこそ強みがあったが、この日は前半が速過ぎたからだ。

 これまでにも前半のハイペースがたたって、後半失速し箱根駅伝予選会で敗れた経験が拓大にはあった。この日も15kmまでは4位をキープしていたが、18kmでは8位と一気に順位を落とした。

 なんとか踏みとどまって9位通過を果たしたものの、“らしくない”レース運びに山下監督の胸中が穏やかではなかったのは無理もない。

「選手たちには『レースは生き物だから、しっかり状況判断しながらいこうね』って話をしていたのですが、全体的に速かったので、彼らもその流れで行ったんだと思います。後半の15km以降しっかり上げていこうと話していたんですけど、全く逆の展開になってしまいました」(山下監督)

 前回の箱根駅伝以降、記録会等を含めても試合には全く出ておらず、試合勘が鈍っていたことも原因のひとつだった。その他にも、主将の石川佳樹(4年)の欠場や、竹蓋草太(3年)、佐々木虎太郎(2年)ら主力の不振など、苦戦の原因は明らかだっただけに、本大会に向けてはきっちりと修正することは可能だ。

亜大で選手として優勝に貢献した山下監督

 山下監督は亜細亜大学出身。ソウル五輪女子10000m代表の松野明美らを育てた岡田正裕監督の指導を受けてめきめきと力を付け、箱根駅伝には4年連続で出場した。そして、3年時には9区区間賞の活躍で総合優勝に貢献している。当時の亜大は“雑草軍団”と称された通り、突出した選手はいなかったものの、とことん走り込んで力を付け、強豪校と渡り合い、ついには頂点に立った。

 その後、拓大監督に就任した岡田前監督の下で、山下監督は2012年から7年間コーチを務め、岡田前監督の勇退に伴って昨季、監督に就任した。

 山下監督は、近年の高速化する駅伝への対応を探りつつも、岡田前監督のスタイルを引き継ぎ、選手の強化に当たっている。夏に熊本・阿蘇で約20日間の合宿を実施するのが拓大の恒例だが、今回も例年通りにこなした。7月までは思い切った練習ができなかったというが、阿蘇合宿では例年以上に走り込み、山下も予選会突破への手応えをつかんだ。

「ようやく足並みがそろって、これだったらいけるという感じがしました」

 こうしてチームは戦う集団に様変わりした。

【次ページ】 計算できる頼もしいエースの存在

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