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“卑怯”な救済案? 富の集中と異常給与のプレミア、外国人オーナー乗っ取り回避も…
 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2020/10/22 06:00

“卑怯”な救済案? 富の集中と異常給与のプレミア、外国人オーナー乗っ取り回避も…<Number Web> photograph by Getty Images

圧倒的なクオリティーのプレミアリーグだが、“金のなる木”には危うさもはらんでいる

最大の恩恵を受けるのはやはり……

 そうなるとプレシーズン期間の延長が可能になるが、最大の恩恵を受けるのは、ファンベースもマーケティングも国際的で海外遠征の需要が高いビッグクラブだろう。

 降格が非現実的なビッグ6メンバーとしては、チーム数が2つ減ることに不安はない。一方、プレミアからはみ出た2クラブを受け入れるチャンピオンシップは、リーグ1(3部)とリーグ2(4部)とともに24クラブ構成のまま。つまり、プロ最下層からセミプロへと弾き出されるリーグ2の2クラブが、PBPがもたらす玉突きで一番の犠牲者だ。

 同時に、下部リーグ勢は昇格の夢も1枠分しぼむ。「黄金郷」とも言えるプレミアへの新昇格システムとして、自動昇格となるチャンピオンシップのトップ2に続く3枠目を争うプレーオフが3~6位ではなく、3~5位と残留を願うプレミア16位の4チームによる形式に変更されることになるからだ。

 ビッグ6がさらに私腹を肥やしやすいPBPは、国内プロサッカー界の「その他」扱いとなる計86クラブに「立場を弁えろ」と告げているかのようだ。

しかしリバプールとマンUは……

 しかし、そのPBPを議題とした緊急会議におけるリバプールとマンUは、ビッグ6構成クラブの賛同すら得られなかった。トム・ワーナー会長とエド・ウッドワードCEOは、「オーナーレベルでの検討段階」を理由に謝罪は避けた。しかしPBPとは異なるフットボールリーグ救済策の検討と実施を望んだプレミアリーグに従わざるを得なくなった両クラブの所有者たちは、「居場所を弁えろ」と言われたようなものだ。

 イングランドのプロ・サッカー界は国外からコントロールされそうになった。厳密にはリバプールとマンUのオーナーが本拠地とするアメリカの東海岸から。この点は、純粋な英国人所有クラブが4つしか存在しない、多国籍な今季プレミアリーグ経営陣間でも快く思われなかったのかもしれない。

 ここサッカーの母国においては、外国人オーナーが当たり前となった今日でも、人々は番狂わせが珍しくない「フェア」な競争環境を保っていることを自負している。

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