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ポストシーズンと乱戦の背景。連戦続きの苛酷な日程を乗り切るのはどのチームか?

posted2020/10/10 06:00

 
ポストシーズンと乱戦の背景。連戦続きの苛酷な日程を乗り切るのはどのチームか?<Number Web> photograph by Getty Images

5試合連続で本塁打を放ったヤンキースのジャンカルロ・スタントン。ポストシーズンの打撃戦を象徴する選手だ

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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 ポストシーズン・ゲームで打撃戦が続いている。いや、「乱戦」と呼ぶほうが適切だろうか。「投高打低」を指摘されたレギュラーシーズンとは対照的に、勝敗の分かれ目が5点前後というゲームが多い。有力投手が打ち込まれ、打球の速さを競い合う本塁打の花火も次々と打ち上げられている。

 レギュラーシーズンを思うとなんとも皮肉な話だが、短期決戦では得てしてこういう現象が起きる。まして今年は、同地区だけで年間60試合を戦う異例の短縮シーズンだった。通常の法則が次々と外れていくのは、むしろ当然のなりゆきだろう。

 乱戦の流れをセットアップしたのは、シェーン・ビーバーを打ち崩したヤンキースだった。9月29日に行われたワイルドカード・シリーズの第1戦。戦前不利を予想されたヤンキース打線は、ア・リーグで投手三冠を達成したビーバーを、完膚なきまでに叩きのめした。あらためて、その攻略を振り返ってみよう。

「コースの甘い棒球」を見逃さないヤンキース打線

 ビーバーは、初回から気負いと力みが目立っていた。もともと剛速球派ではなく、変化球の制球力で勝負するタイプなのに、初球から4球続けて直球を投げ込んできた。それも、コースの甘い棒球。

 ヤンキース打線は、それを見逃さなかった。1番のDJ・レメイヒューが3球目をライト前に打ち返し、2番のアーロン・ジャッジが初球を右中間のスタンドに叩き込んだ。わずか4球で2失点。

 これで動揺したのか、ビーバーは得意のナックルカーヴやカッターの制球力も失ってしまった。ストライクとボールの差は歴然としていた。ストライクは打ちごろのスピードで投げ込まれるし、ボールはストライクゾーンをまったく通過しない。いわゆる、ボール→ボールの球で、打者にはあっさりと見極められてしまう。

 ビーバーは、そのまま立ち直れなかった。4回3分の2で降板するまでに、9安打、2本塁打、7失点を喫した。ヤンキースは12対3と大勝し、余勢を駆って地区シリーズ初戦でもア・リーグ第1シードのレイズを9対3で倒した(そのあとは2連敗)。

調子の波に乗れなかった打者たちが“復活”してきた

 牽引車となっているのは、ジャンカルロ・スタントンだ。今季は故障が祟って2割5分、4本塁打の数字しか残せなかったが、本来の潜在能力は桁外れだ。2014年(37本)と17年(59本)にはマーリンズで本塁打王に輝いているし、打球の速さは現在の球界で随一だろう。その打棒が、久々に爆発している。

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ニューヨーク・ヤンキース
ジャンカルロ・スタントン

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