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MLB独特の大胆なトレード戦略。30球団中27位の低予算球団・パドレスの策とは?

posted2020/09/05 20:00

 
MLB独特の大胆なトレード戦略。30球団中27位の低予算球団・パドレスの策とは?<Number Web> photograph by Getty Images

後半戦に入ったMLB。エンゼルスやパドレスなど各球団はトレードを駆使して今後の戦略を練っている。

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ナガオ勝司

ナガオ勝司Katsushi Nagao

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 モニターに映るマイク・トラウトの表情がどこか、寂し気に見えた――。

 8月31日月曜日の午後、マリナーズと接戦を繰り広げていたエンゼルスの2回裏の攻撃中だった。「打者」大谷翔平選手の活躍を見ようとテレビ中継を眺めていると、レッズへのトレードが決まったばかりのブライアン・グッドウィン外野手が、ダッグアウトの仲間に別れを告げているシーンが抜かれていた。トラウトはベンチに座ったままで、笑顔のグッドウィルに何事か言葉をかけ、ハグされると「分かったよ」とでも言うように、元同僚の背中をポンポンと叩いた。

 トラウトはもう何年も、そういう立場にいる。

リーグ最下位に低迷しているエンゼルス

 彼が2011年にメジャー昇格して以来、プレーオフに進出したのはア・リーグ西地区優勝を果たした2014年と、2位となった2017年だけ。それ以降は最高順位が3位と「現役最高の選手」が、プレーオフの大舞台に立つことなく、シーズン途中で他チームに補強されていく仲間を見送り続けている。

 とは言え、エンゼルスが今年、ア・リーグ西地区の最下位(12勝23敗、8月30日現在)に低迷していることに驚いている人は少ないのではないか。昨オフ、アンソニー・レンドン内野手という攻撃の要を補強したものの、積年の課題である先発投手陣の大型補強はしなかったのだ。「投手」大谷翔平が今季絶望になる不運はあったが、元々、ア・リーグ西地区のライバルであるアストロズやアスレチックスと比較すると戦力に差があるのは否めなかった。

 ただし、レンドンを含めた今までの補強が来年、再来年に成果を見せる可能性がなくはない。

 なぜなら、2014年のワールドシリーズ王者ジャイアンツや翌年の同王者ロイヤルズ、2016年の同王者カブスや翌年の同王者アストロズの優勝までの過程を追えば明らかなように、「チーム再建」はいつもファーム組織の拡充から始まり、トラウトのような実力あるスター選手を中心に戦力がある程度向上したタイミングで、フリーエージェント(FA)を獲得し、生え抜きの有望株を「実弾」にしてトレードを仕掛けて戦力を整えていくことになるからだ。

 エンゼルスも当然、今までその戦略を試みてきたし、他の多くのチーム同様、今はじっと我慢の時期なのかも知れない。エンゼルスにとって問題なのは「じっと我慢の時期」を越えて「収穫期」に入ったチームがいくつもあることだ。

 その代表格は、ナ・リーグ西地区2位と大健闘中のパドレスだ。

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