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モウリーニョ、トッテナムを蘇生。
地味でも期待大な2年目のタイトル。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2020/08/31 11:40

モウリーニョ、トッテナムを蘇生。地味でも期待大な2年目のタイトル。<Number Web> photograph by Getty Images

停滞したトッテナムを立て直したモウリーニョ監督。2020-21シーズンにさらなる存在感を見せるのか。

守備重視は何かと否定されがちだが。

 メディアでは友人が自虐的ジョークで処理した部分、つまりモウリーニョの守備重視が否定的に強調される傾向がある。

 昨季の上位4チームがユルゲン・クロップ、ペップ・グアルディオラ、オレ・グンナー・スールシャール、フランク・ランパードといった攻撃志向の強い監督であるように、ボールを支配して主導権を握り続けるスタイルが主流となりつつある。その状況下で、ポゼッションにこだわらず受け身になるモウリーニョの戦い方は「過去のもの」とみなされているように思える。

 互いに攻め合って点を取り合うような、単純に観て楽しめる試合が増えるのは結構である。だが、そうしたチームとの対戦で「肉を切らせて骨を断つ」を見事に地で行くカウンター巧者も存在してもらいたい。

 クラブが前体制とは異なるスタイルを承知で3年半契約を結んだ、モウリーニョのトッテナムは、それが可能なチームだ。

最終盤でのモウリーニョ流の極意。

 2019-20シーズン大詰めの34節ボーンマス戦(0-0)では、降格する運命にあった格下相手に枠内シュートを1本も打てなかった。この引き分けは、モウリーニョが「終わっている」証拠であるかのように報じられた。

 しかし翌節の北ロンドンダービーでは、内容で上回ったアーセナルからしぶとく逆転勝利を奪い、地元ライバルをトップ6争いから脱落させた90分間が、名将が披露した「お手本」と讃えられた。

 また37節レスター戦(3-0)の勝ちっぷりは、モウリーニョ流の極意だった。ボール支配率はアーセナル戦の37%をさらに下回る29%にとどまっても、まるで優勢を続けたかのような最終スコアでレスターのトップ4フィニッシュにダメージを与え、自軍の6位浮上に望みをつないでみせた。

 モウリーニョが身上とするスタイルは、確かにサッカー界の時流に逆らってはいても、使い物にならない「時代遅れ」の代物などではない。

  ポチェッティーノ流の攻撃路線に終止符が打たれた事実は残念だが、モウリーニョ流が本格的に始まる新シーズン、トッテナムが2008年のリーグカップ優勝以来となるタイトル獲得に、どこまで迫れるかが楽しみだ。

【次ページ】 「喜んでもらえるシーズンに」

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