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都立の星・鈴木優が迎えた開花の時。
23歳に響いたベテラン捕手の言葉。 

text by

米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph byKyodo News

posted2020/07/08 11:30

都立の星・鈴木優が迎えた開花の時。23歳に響いたベテラン捕手の言葉。<Number Web> photograph by Kyodo News

7月1日の西武戦でプロ初勝利を挙げたオリックス鈴木優。8日、2勝目を懸けて本拠地・京セラドームのマウンドに上がる。

昨年まで一軍登板はわずか「3」。

 都立雪谷高校から2015年にドラフト9位で入団してから、昨年まで、一軍登板はわずか3試合。順風満帆ではなかったが、この6年間積み重ねてきたことのすべてが詰め込まれた1勝だった。

 以前の鈴木は、リリーフを任されていたこともあり、ストレートとスピードにこだわっていた印象があった。プロ3年目の4月に、ファームの試合で自己最速の150キロを計測した時、「150は目標だったので嬉しい」と満面の笑みで話していた。

「あの頃は、とりあえず自分自身の武器を作るために、まず150キロを出すことを第一に練習していました。ファームの投手コーチ陣とも話した上で、まずは力強いまっすぐを投げようと。当時はまっすぐにすごくこだわりを持って、まっすぐで抑えられるピッチャーになろうと思って取り組んでいました」

 しかしその後、鈴木の姿は変わっていった。課題だったコントロールを向上させ、今では、変化球や高低をフルに活かした配球で打者を抑える姿がある。

 150キロのストレートを手に入れても、それだけではプロの世界で生き残っていけないと痛感したからだ。

「じゃあ次の段階として何が必要だろう、ということで、変化球だったり配球だったりを積み上げていきました」

 もともと得意としていたスライダーやフォークの精度を上げ、4年目はファームで先発として安定した結果を残していた。

ベテラン捕手・山崎勝己の言葉。

 そうして手応えを感じていた鈴木に、さらなる気づきを与えたのが、ベテラン捕手の山崎勝己だった。

 「勝己さんに受けてもらった時に、『1つひとつ(の球種)はいいけど、これだけでは、上ではまだちょっと無理やと思うわ』と率直に言ってもらって。『え、じゃあ何が僕に必要ですかね?』と聞いたら、『速い系のゾーンに投げ込める変化球が1つないと、厳しいわ』って。

 その頃、ファームでは普通に抑えていたんですけど、僕の中で『勝己さんが言うんだったら』というのがありました。このままでは、上に呼ばれることはあっても、上で勝ったり、抑え続けるのはちょっと厳しいのかなと。勝己さんに、しかもあの調子のいい時期に言われたからこそ、響いたんですよね」

【次ページ】 もし150キロが出ていなかったら…。

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