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NBA再開へ、懸念は「メンタル」。
ウイルスと同等に重きを置く対策。 

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宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

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photograph byJason Miller/Getty Images

posted2020/07/03 11:30

NBA再開へ、懸念は「メンタル」。ウイルスと同等に重きを置く対策。<Number Web> photograph by Jason Miller/Getty Images

2年前、鬱を公表したデマー・デローザン(スパーズ)。彼らの発言によって選手のメンタルヘルスの重要性が見直されてきた。

再開プランを記すハンドブックにも。

 選手会長のクリス・ポールは、共同会見のなかで、こう語っている。

「とてもありがたいことに、僕らのリーグでは、ケビン・ラブやデマー・デローザンのおかげでメンタルヘルスについて話しやすくなってきている。実際、現地に行ってプレーするにあたって、メンタルヘルスはとても大きな問題だ」

 リーグの再開プランを記したハンドブックでは、各チームが敷地内に帯同するスタッフの中にメンタルヘルスの専門家を加えることを推奨。限られた人数のなかで帯同できない場合は、選手たちが必要なときに、電話やオンラインで専門家と話せるような状態を保つように定められている。

ウィザーズも意識する「オープンな環境」

 八村塁が所属するワシントン・ウィザーズでも、メンタルヘルスの問題には、シーズン前から取り組んできた。

「私たちは、シーズン前からきちんとしたプラットフォームを築いてきました。最初に準備したのは、選手たちがいつでもメンタルヘルスや心理学の専門家に連絡を取れるような体制です」

 そう語るのは、チームのアスレティック・ケア&パフォーマンス部門責任者を務めるドクター・ダニエル・メディナ。選手の身体面の健康と並んで、メンタルヘルスも重要な柱だと位置づけ、取り組んでいるという。特にシーズン中断後は、いつも以上に先行きの見えないなかで不安を感じる選手たちをサポートするように心がけてきたという。

「社会全体で先行きが見えない状態で、この先の契約にどう影響するのかといった心配も出てきます。今後は、(プレイオフに進出したとして)7週の間、家族との接触をまったく絶たれるわけです。故障のリスクも高く、自分の先のキャリアにどう影響するかといったことも考えるでしょう。そういった意味で、私たちは個々の問題を語れるようなオープンな環境を作るように意識しています」

 チームの役割としては、選手とメンタルヘルスの専門家の橋渡しをすることも大事だとメディナは言う。そのために、選手が専門家に相談するスパーク(きっかけ)となるような工夫もしているという。そのひとつの例として、さまざまな動画を作成し、それを共有していると明かした。

【次ページ】 支えるだけでなく、楽しめる環境を。

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