「言い訳はしない。彼らが我々よりもいいプレーをした」

　ゲーム1とゲーム2に連勝して王手をかけたシーホースだったが、桜木のプレーはトヨタ戦と違っていた。

　ゲーム3でシリーズ最多となる10点を記録したものの、東芝との5試合で打ったシュート数はいずれも10本未満。22点差の大差で落としたゲーム4は、ベンチスタートで16分間のプレータイムに限定されてしまう。

　雌雄を決するゲーム5、先発に戻った桜木はハードに戦い続けた。

　24分間で8リバウンド、4アシストを記録したものの、4点とスコアリングでの期待には応えきれずに終わる。70対76で東芝に競り負け、2連勝からの3連敗でNBL2連覇を逃したシーホースにとって、桜木のパフォーマンスがチームの命運を左右することを改めて証明する結果となった。

　試合後、桜木に話を聞きに行くと、知られざる事実を語った。

「ゲーム1でジュフ磨々道のひじが右肩を直撃したんだ。痛みが酷くて右腕を上げるのはしんどかった。でも、言い訳はしない。彼らが我々よりもいいプレーをしたんだ」

桜木がベンチにずっと座っていた。

　桜木が痛みに強い選手であることは、レギュラーシーズンならば間違いなく欠場していたレベルのケガをしながらも、最後までプレーし続けたことでも明らか。ショッキングな敗戦を受け入れ、言い訳をしなかったのはプロとしてのプライドだった。

　NBLファイナルでの悔しさを糧に挑んだ、翌シーズンのBリーグ1年目。シーホースはファイナル進出をかけ、黄色に染まったブレックスアリーナ宇都宮で栃木と激戦を繰り広げた。

　ゲーム1を落として迎えたゲーム2、最大19点のリードを奪いながらも追いつかれた結果、主力を休ませることなく出し続けてようやく2点差で振り切って1勝1敗のタイに持ち込む。

　しかし、そこにはいつもと違う光景があった。桜木は4Qの10分間一度もコートに出ることなく、ベンチにずっと座っていたのである。

【次ページ】　まさかのターンオーバーが起こり……。