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BCリーグはコロナ禍でどんな準備を?
6月20日開幕「ピンチをチャンスに」 

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高木遊

高木遊Yu Takagi

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photograph byROUTE INN BCLeague

posted2020/06/18 07:00

BCリーグはコロナ禍でどんな準備を?6月20日開幕「ピンチをチャンスに」<Number Web> photograph by ROUTE INN BCLeague

開幕までの準備に奔走したBCリーグとその各球団。さまざまな施策に取り組み、地域やスポンサーとの関係性を強化した。

リーグ戦は近隣チームのみと対戦。

<試合についての新ルール>
・7回以降、2時間45分を超えて新しいイニングに入らない。
・リーグ戦において延長戦は行わない。
・一部試合において7イニング制ダブルヘッダーを導入する。
 
<リーグ運営についての改定>
・年間70試合予定から年間60試合(ホーム、ビジター各30試合ずつ)とする。
・東西2地区制から3地区6グループ制に変更。対戦数が多いチーム同士でグループ(A~F)を編成し、グループ内で勝率が高いチームが地区チャンピオンシップへ進出する。
 
 試合時間は、観客が長い時間同じ場所にとどまることを少しでも避けるためであり、7イニング制ダブルヘッダーの導入は、従来よりも過密になった日程でリーグ戦を消化しきるための策だ。

 リーグ運営については、東は福島や新潟、西は福井や滋賀まで広がっているため、可能な限りの長距離移動を減らす施策。たとえば東地区Aの茨城であれば今季は同グループの隣県の栃木と40試合、東地区Bの埼玉・神奈川と10試合ずつを行う。

 そして当面は無観客だが、富山は県からの許可も下りて唯一、有観客で開幕戦(6月20日13時~県営富山野球場)を行う。ソーシャルディスタンスを踏まえ、席の間隔を空けての1000人を上限とはするものの、ファンを動員することが可能となった。この認可の要因の1つには「近県同士で試合を組むから」といった事情もあったといい、この施策については正解だったと早くも言ってよいだろう。

グッズ製作、フレンドシップ協定。

 今回の自粛期間。感染リスクを抑えることはもちろんだが、各球団も様々な取り組みを実施した。NPB球団とは異なりチケット収入の占める割合はさほど大きくないものの、試合・興行を行うことができない中で立ち止まっていれば、ファンや地域、そして収益のメインとなるスポンサーが離れてしまうのは当然のこと。それらを繋ぎ止めるための関係継続および強化が不可欠だった。

 埼玉は例年なら開幕前後に大きく増加するファンクラブ会員が伸び悩むなど苦しい状況だったが、『#コロナに負けない「FIGHT ON!」Tシャツ』を2500円(税込)で発売。500枚近くを売り上げ、収益確保に大きく貢献した。

 きっかけは宮之原健選手会長が試合の行えない状況を鑑み、角晃多監督を通して報酬の一部返納を球団に申し出たことから始まる。ただ今井英雄社長は「我々は育ててくれた親御さんや野球関係者から選手たちをお預かりしている立場」と、苦しい状況に変わりはなかったが「まだそこまでの状況ではないので、気持ちだけいただくよ」と丁重に断った。

 そんな最中にチームスローガンである「FIGHT ON!」を使ってグッズを作ろうという提案がスタッフからあり、しかも引退したOBに野球グッズなどを販売する会社に就職した人間がいた。そのため「彼の就職祝いも兼ねて」とTシャツを発注。こうした様々な思いや縁によって苦しい財務状況に光が与えられた。

 また、この1月からは埼玉県を中心に温浴施設を運営する株式会社温泉道場の100%出資子会社にもなり、さらに本拠地を置く熊谷市などとフレンドシップ協定を結んだ。前述のように西武球団とも連携を強めており、地元とのあらゆる協力関係をより強めている。

【次ページ】 黒字経営の新潟も新たな施策を。

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