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日本野球に“早生まれ”が少ない理由。
野球界は最終目標をどこに置く? 

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高木遊

高木遊Yu Takagi

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posted2020/05/30 20:00

日本野球に“早生まれ”が少ない理由。野球界は最終目標をどこに置く?<Number Web> photograph by Yu Takagi

子供たちにとって体格差は大きい。それによって試合に出る機会を失っては、可能性を狭めることになる。

大成するプロは10月以降が多い?

 当然生まれ月が才能や能力すべてを決めるわけはなく、勝亦氏は「プロ野球選手で活躍しタイトルを獲るような選手は、10月以降の選手の割合が高いという数値が出ています」とし、以下のように警鐘を鳴らす。

「(活躍が簡単にできてしまった)4~6月生まれの選手は目標を見つけるのが難しい。活躍できるのが当たり前になってしまうと、もっとスキルをつけないといけない時に、試合に勝つための野球やその場しのぎの練習をやってしまう可能性が高い。伸びしろがもっとあるはずなのに、それをジュニア期に奪われている可能性があります」

「目先の勝利」に走ってしまう要因。

「試合に勝つための野球」「その場しのぎの練習」の弊害は、この生まれ月の話題以外でも挙がる議題だ。

 高校野球での投球過多でもこの話題になることが多いが、小学生の学童野球ではこんなケースもある。小柄な1番打者が2ストライクと追い込まれるまでバントの構えをして見逃し続け、小柄ゆえのストライクゾーンの狭さを生かして四球を選ぶ、という将来にまったく役に立たない行為を平然とやらせる監督もいる。

 その根本にあるのは「野球界の最終目標(ゴール)はどこにあるのか?」という問題ではないだろうか。それが実に曖昧になっているのが現状だ。

 例えばサッカーやラグビーはW杯での勝利や優勝、五輪競技なら金メダルだろう。野球でもMLBのアカデミーがある中南米の国ならば「メジャーリーガーを1人でも多く」などがあるだろう。

 しかし、日本球界は全世代を統括する組織が実質的にない。プロはプロ、高校は高校、中学は硬式だけでも5団体に分かれているといったように、それぞれが独自に主体性を持って活動している。

【次ページ】 世代別の侍ジャパンでさえも。

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東京農業大学
勝亦陽一

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