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恩師が語る吉田正尚の規格外な打球。
「プロはなんで獲らんかな、と」

posted2020/05/15 11:40

 
恩師が語る吉田正尚の規格外な打球。「プロはなんで獲らんかな、と」<Number Web> photograph by Kyodo News

球界屈指のスラッガーに成長した吉田。昨季は打率.322でリーグ2位、自己最多となる29本塁打をマークした。

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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Kyodo News

 3月20日に予定されていたプロ野球の開幕は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期となり、まだ開幕日は決まらない(5月13日時点)。

 オリックスでは、寮に住んでいる選手が午前中、それ以外の選手は午後、と時間帯を分けて、3勤1休のペースで自主練習を続けてきた。

 4月下旬、Number1002号の野球特集「今だからできること。」にメッセージを寄せてもらうため、吉田正尚に電話インタビューをお願いした。

 吉田は終始、慎重に言葉を選びながら答えてくれた。

「先が読めないですからね。そこが難しい」と調整の難しさに触れたが、それ以上は、ほとんど不安や不満は口にしなかった。

吉田の言葉に感じた気遣いの心。

「僕らは野球ができないだけですけど、(経営する)店が潰れてしまったり、いろいろな立場の人がいるので……」

 その言葉に複雑な思いが凝縮されていた。

 球団施設での自主練習が許されているとはいえ、これだけ長い期間、チーム揃っての練習や実戦ができないというのは、プロ野球選手にとって大きなストレスのはずだ。

 ただ、休業を余儀なくされるなどして経営や生活が立ち行かなくなっている人や、休む間もなく最前線に立ち続ける医療従事者など、過酷な状況にいる人々のことを考えると、不安だとは言えないし、それぞれが事情を抱える中で、悪気はなくとも自分の発する言葉が万が一にも誰かを傷つけることになってはいけない、という気遣いがひしひしと伝わってきた。

 外で練習ができなくなっている子供たちへのアドバイスを求めた時にも、「家の広さだったり、各家庭によって環境が違うので、一概にアドバイスするのは難しいですね。ただ、置かれている環境でやれることを見つける工夫は大事だと思います」と言うにとどめた。

【次ページ】 毎日欠かさなかった“素振り”。

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