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BC神奈川の秘密兵器、杉浦健二郎。
「僕が独学で150kmを投げるまで」 

text by

村瀬秀信

村瀬秀信Hidenobu Murase

PROFILE

photograph byTomosuke Imai

posted2020/05/17 10:00

BC神奈川の秘密兵器、杉浦健二郎。「僕が独学で150kmを投げるまで」<Number Web> photograph by Tomosuke Imai

150kmを計測したトライアウトでは、打者4人を相手に無安打2奪三振。自ら立ち上げた草野球チーム「相模台レイダース」は後輩に譲り、最短でのNPB入りを目論む。

野球部の理不尽な指導に嫌気がさした。

 結局秘密兵器のままそこで野球を諦めてしまったことは、肉体的な故障以上に理不尽な指導が大きく影響していたのかもしれない。進学した県立麻溝台高校では甲子園を目指すこともなく『中学時代の体育の授業でやったら面白かった』というバドミントン部に入部した。

「ただ、バドミントンは遊びでやるなら面白いんですけど、本格的にやってみるとまったく勝手が違う。最初なんていくらやってもラケットの真ん中に当たらないんです。高1の時は初心者だと思われるのが悔しかったんで、めちゃめちゃ練習しましたよ。ただ特別な練習はしていないと思うんですけどね。ウェイトの類も一切していませんし、やったことはバドミントンの動きを繰り返し反復したということですかね」

高3の草野球は楽しかった。

 ど素人から高校3年で県大会に出場するまでの選手になった杉浦であるが、気になるのはバドミントンの効果だ。スマッシュの初速は世界記録で493km。学生でも300km近くを出すという、数多のスポーツの中でもダントツのスピード感を生み出すこの競技。昨今ではプロ野球選手でも自主トレに取り入れる選手も珍しくなく、投球との親和性もありそうだが、知らず知らずのうちに杉浦の”投球能力“を上げていたのだろうか。

「いやいや、皆さん勘違いされる方が多いのですが、野球とバドミントンの動きは本格的にやればやるほど別モノになります。投球とスマッシュにおける腕の振りひとつ取っても、入り方から何から全然違いますからね。だからどっちかに慣れてしまうと修正するのが大変なんです。でも、高校時代バドミントンに打ち込んだことがすべてムダだとは思いませんよ。バドはフットワークをはじめ本当に地味に激しく動くんです。そのおかげで下半身も、肩周りの筋肉も付いたし、基本的な身体能力が伸びました。あとは力を抜いたところから急激に力を出す瞬発力が付いたことも大きいと思います」

 野球へと復帰するきっかけは、バドミントンの最後の大会が終わった高3の夏に、兄に呼ばれて参加した草野球の助っ人だった。そこには中学時代に杉浦が幻滅した堅苦しい野球の姿とは真逆の、サインもなく、怒声もなく、全員がただひたすらフルスイングでボコボコホームランを打ちこむ、明るくて楽しくて、それでいてソコソコ強い野球があった。

【次ページ】 草野球だけで才能が伸びた理由。

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杉浦健二郎
神奈川フューチャードリームス

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