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強さも仏頂面にも全部理由がある!
孤高の大関・貴景勝の魅力とは?

posted2020/03/20 09:00

 
強さも仏頂面にも全部理由がある!孤高の大関・貴景勝の魅力とは?<Number Web> photograph by Kyodo News

無観客開催のエディオンアリーナ大阪にて。春場所初日、貴景勝が高安をしっかりとした押し出しで下したシーン。

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飯塚さき

飯塚さきSaki Iizuka

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Kyodo News

 ご当地力士の1人として、地元のファンから大きな期待が寄せられている大関・貴景勝関。残念ながら、今場所は思うような結果に結びついていないが、だからこそ、本稿を彼へのエールの意味で送り出したい――。

「小さいのに強い佐藤くん」

 佐藤くん。

 平凡な苗字ながら、「あの小さいのに強い佐藤くん」といえば、彼しかいなかった。

 報徳学園中学校3年時には、全国中学校相撲選手権大会で優勝。名門・埼玉栄高校に特待生として入学すると、全日本ジュニア体重別相撲選手権大会の100kg以上級(無差別級)2連覇、世界ジュニア相撲選手権大会の無差別級で優勝。在学中にもかかわらず入門を決意し、華々しい経歴をもって、憧れだった貴乃花部屋の門をたたいた。

 しばらく四股名は本名の佐藤のままだったが、新入幕と同時に改名。後に多くの人が知るところになる力士、「貴景勝」が誕生した。

 所要28場所という、日本出身力士史上1位のスピード出世で大関に昇進。ケガに泣き、一度は陥落するものの、たった1場所でその地位に返り咲いた。

 現在23歳――その若き大関の魅力に迫る。

貴景勝の魅力その1:徹底した突き押し

 身長175cm。決して大きいとはいえない体格ながら、突き押しの型を崩さないのが貴景勝の取り口である。

 ある程度身長の伸びが止まってきた高校生の頃、これまで培ってきた突き押し相撲で勝負していこうと改めて決意した。

「昔から“業師”といわれるのが嫌で、小さくてもパワーで圧倒できる力士になりたかった。小兵でうまい人はいるけど、小さくても大きい人をパワーでねじ伏せる力士はあまりいないから、自分はそうなりたいなと思ったんです」と、自身のアマチュア時代を振り返る。

 頭から低くぶちかます力強い立ち合い。下半身からパワーを伝えるどっしりとした突き押し。大きな相手にも躊躇なく勝っていく姿が勇ましい。

 押せないときは、相手を引いてしまう場面よりも、一度下がるようにしてもう一度当たり直すといった冷静な場面が多いのも彼の特徴といえる。

「押せないときに無理して押すのではなく、“ここは押せないな”と思える判断能力が大切。安易に引くと、相手を呼び込んでしまうので逆効果です」

 しかし、小さい力士が突き押し相撲一本でここまで勝負するのは至難の業だ。事実、これまで周囲からは、「それでは強くなれない」といった心無い声も浴びせられ続けてきたという。

【次ページ】 いつも逆境から這い上がってきた……。

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