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車いすテニス全豪優勝の上地結衣。
東京2020へ向けた“建設的破壊”。

posted2020/02/23 08:00

 
車いすテニス全豪優勝の上地結衣。東京2020へ向けた“建設的破壊”。<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

デフロートと熾烈な世界No.1争いを繰り広げる上地結衣。全豪オープン優勝でパラリンピックイヤーに勢いをつけた形となった。

text by

秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

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photograph by

Hiromasa Mano

 8月末に開幕するパラリンピックで、上地結衣がどんなプレーを見せてくれるのか、今からぞくぞくしている。

 現時点で世界ランキング2位。1位は2歳年下のライバル、ディーデ・デフロート(オランダ)だ。

 この数年の上地の歩みは、ほぼ打倒デフロートのための取り組みだった。もちろんパラリンピックは一番の目標だが、それにも増して「今はまず彼女に勝ちたい」という気持ちがあるという。

 手強い相手、強大な壁に挑もうという、アスリートの本能がそう言わせるのだ。

 ランキングポイントではデフロートが4840ポイント、上地は3840ポイントだから、ちょうど1000ポイントの大差がついている(2月17日時点)。上地もコンスタントに成績を残しているが、このところ直接対決で分が悪い。

 通算14勝16敗はほぼ互角だが、2018年以降に限れば3勝12敗だ。もともと力強いショットを持っていたデフロートだったが、安定感が格段に増した。精神的にも成熟し、ゲーム運びに隙がなくなった。上地は昨年5月に国別対抗戦のワールドチームカップで勝ったのを最後に5連敗中だ。

バックハンドの高い打点に対応。

 昨年の全豪では決勝で当たって0-6、2-6で敗れた。スコア上は完敗だったが、手もなくひねられたという敗戦ではない。将来、勝ち星を手にするために、戦術を試し、もがきながら、小さな手応えを得た試合だった。

 デフロートは小柄な上地が苦手とするバックハンドの高い打点にボールを集めてきた。前週の大会で上地が勝っていたため、対策を立ててきたのだ。「準備してきたこととの違いに戸惑った」という上地だったが、黙ってやられていたわけではない。

 強打に対応するだけでなく、ベースラインの前に入って自分から仕掛けるプレーを試みた。その延長で、ネットに詰めてドライブボレーを決める場面もあった。

【次ページ】 リスクがあっても変化を求めた。

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