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なぜマンCは2年間CL参戦禁止に?
現地発“バレンタインの惨劇”真相。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2020/02/17 12:00

なぜマンCは2年間CL参戦禁止に?現地発“バレンタインの惨劇”真相。<Number Web> photograph by Getty Images

グアルディオラ監督のもとで王朝を築き上げたマンチェスター・シティ。しかしFFP規則によって、その時代が終わりを告げてしまうのか。

対立のきっかけは2011年に遡る。

 注目されるのが、シティのピッチ内外での反撃だ。クラブは今回の処分を不服として、「スポーツ仲裁裁判所(CAS)への提訴」に出る構えを表明している。UEFAによる決定を“偏見”とみなす挑戦的な声明だ。

 CASへの提訴を「公正な判断を求める最初の手段」としていることから、いざとなれば、より高等な国際仲裁機関への提訴も辞さないと考えられる。

 シティはFFP規則違反を巡って「訴訟の開始も、調査も、判決も、すべてがUEFAの一存」と異議を唱える。

 対立のきっかけは、2011年の同規則導入当初にまで遡る。2012年と2013年に報告された赤字がFFP上の許容範囲を超え、4900万ポンド(約69億円)の罰金制裁を受けたのは2014年だ。

 処分を受け入れたクラブは、罰金支払いと翌年度からのルール遵守でこの問題に終止符を打ちたいところだった。実際、2017年には改善要求に応えたと認められて、UEFAから罰金の3分の2に相当する額を返金されている。

 とはいえシティは、その後も補強姿勢を弱めたわけではない。過去5年間で、選手売却益を差し引いても6億ポンド(約840億円)を超える移籍市場での出費総額は、大型補強を繰り返している印象が強いマンチェスター・ユナイテッドを大きく引き離すプレミア最高額だ。

 ただし、昨年はハリー・マグワイア(ユナイテッド)、一昨年にはビルヒル・ファンダイク(リバプール)と、それぞれDFとして世界最高の値札が付いた両名には手を出していない。皮肉なことにCBの故障者続出が、今季プレミアでリバプールの独走を許す格好につながってしまうのだが、FFP対応の意識は窺える。

95億円のスポンサー収入約9割を。

 では今回の処分、何が契機となったのか。2018年11月、サッカー界の暴露サイトとして知られる『フットボール・リークス』の告発に目をつけたドイツの『デア・シュピーゲル』誌の報道によって、シティは過去を掘り返される格好となった。

 そしてUEFAが調査に乗り出すと公表したのは昨年3月のこと。

 2015-16シーズンにエティハド航空からのスポンサー収入として報告された6750万ポンド(約95億円)の9割近くをシティ・フットボール・グループ(クラブの経営母体)の親会社に当たる、アブダビ・ユナイテッド・グループ、つまりはオーナー自らが負担していたと判断された。それが今回の厳重処分に至った。

【次ページ】 UEFAの実行委にはPSG会長がいる。

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