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『アベベ・ビキラ「裸足の哲人」の栄光と悲劇の生涯』五輪随一の劇的シーンを生んだ「裸足のアベベ」の光と影。 

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後藤正治

後藤正治Masaharu Goto

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posted2020/02/09 08:00

『アベベ・ビキラ「裸足の哲人」の栄光と悲劇の生涯』五輪随一の劇的シーンを生んだ「裸足のアベベ」の光と影。<Number Web> photograph by Sports Graphic Number

『アベベ・ビキラ「裸足の哲人」の栄光と悲劇の生涯』ティム・ジューダ著 草思社文庫 2011年刊、2019年文庫化 900円+税

 私のオリンピックの記憶は1960(昭和35)年のローマ五輪からであるが、エチオピアのアベベ・ビキラという名を耳にし、苗字と名前はどちらなのか……と思ったことを覚えている。

 本書は、年月を経て、イギリス人ジャーナリストがたどったアベべへの旅であるが、取材は世界に及んでいる。

 マラソンコースは古代ローマの遺跡を縫った、趣きあるものだった。終盤、口ひげを蓄えた褐色の走者が先頭に立つ。裸足だ。「生霊さながらの様子で駆け抜けていく走者に、(沿道の)女たちはひざまずいて十字を切った」とある。

 記者席は大騒ぎとなった。走者がだれなのか、だれも知らなかったからだ。

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