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イチロー、第2の野球人生へ。
現役28年の想いを込めた「金言」。 

text by

笹田幸嗣

笹田幸嗣Koji Sasada

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photograph byKyodo News

posted2019/12/31 20:00

イチロー、第2の野球人生へ。現役28年の想いを込めた「金言」。<Number Web> photograph by Kyodo News

「イチロー杯争奪学童軟式野球大会」の閉会式で選手を表彰するイチローさん。

「自分のことで精一杯だったけど」

 その頃からだっただろうか。彼の発言内容が変わってきた。

「自分のことで精一杯だったけど、人の思いに応えたいという気持ち。自分のことをやるのは当然ですけど、それと同じくらいに生まれる」

 殿堂入り確実の世界最高峰の名選手に対し、失礼ながらも“経験が人を育てる”、“人の痛みを感じるようになった”のだと思った。

 その謙虚な姿勢は現役引退まで続いた。16年シーズンに悲願の3000安打を達成した際にはこんな言葉を選んだ。

「達成した瞬間にチームメイトたちが喜んでくれてファンの人たちが喜んでくれた。僕にとって3000という数字よりも、僕が何かをすることで僕以外の人たちが喜んでくれた。今の僕にとって何より大事なことだというのを再確認した瞬間でした」

子供達に授けた2つの言葉。

 そして、現役引退。

「自分のこと」から「周りの方々への感謝」へと変わった野球観は「お役に立ちたい」へと変わった。

 12月13日から15日にかけて受講した「学生野球資格回復制度」の研修会でその思いを寄せたイチロー氏は22日、故郷の愛知県豊山町で行われた「第24回イチロー杯争奪学童軟式野球大会」の閉会式で子供達に2つの金言を授けた。

「みんなが謙虚な気持ちで先生を尊敬し、自分自身を自分で鍛えて欲しい」

 近年、パワハラとも批評される風潮がある中で指導者の威厳は弱まっている。「厳しく教育することが難しい」とされる時代背景を嘆きつつ、小学生にこう言った。

「最終的には自分。そういう時代に入ってきた」

 もうひとつは、自ら行動して挑戦することの尊さだった。スマートフォンひとつでなんでも調べられる時代に「世界が小さくなったように思えるが、外に出て分かることがある。体験して感じて欲しい」と力説。経験し、考えることが成長に繋がると自負してきたレジェンドは実感を込めて続けた。

「当たり前のことが当たり前でないことに気付き、価値観が大きく変わる経験をして欲しい」

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