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始まりは足立区のスーパー屋上から。
トランポリン・森ひかるの勝負強さ。 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byAFLO

posted2019/12/08 11:30

始まりは足立区のスーパー屋上から。トランポリン・森ひかるの勝負強さ。<Number Web> photograph by AFLO

12月1日、世界選手権決勝で優勝を果たし、弾ける笑顔を見せる森。

全日本を史上最年少で制覇。

 そこで魅力を感じると、トランポリンにのめりこんでいき、クラブに通うようになった。

 台頭するのは早かった。2011年の世界選手権11・12歳の部に出場し優勝する。2013年には、全日本選手権で優勝。14歳での制覇は史上最年少という記録ともなった。

 ただ、「18歳以上」の年齢制限があり、2016年のリオデジャネイロ五輪に出場する資格はなかった。東京五輪への思いには、その分の気持ちも含まれていたかもしれない。

 その後、トランポリンを極めたいと、強豪の金沢学院高校(当時は金沢学院東高校)へ転校する。

 順風満帆なわけではなかった。

「ここまで辛いことがたくさんありました」

 と、語っている通り、慣れない地での生活は簡単ではなかった。これまでの人間関係から離れた辛さもあった。

 それでも、自分にはトランポリンしかない、という信念とともに、心が折れることはなかった。

 そんな一途な思いが生んだ勝負強さだった。

トランポリン王国とも言われる石川県。

 女子では森に次いで土井畑知里が銀メダルを獲得。

 男子では堺亮介が5位になり、規定により森とともに五輪代表に内定した。

 今大会では日本勢の活躍が目立ったが、実は世界選手権では、これまでに10大会中8大会で日本勢はメダルを獲得してきた。世界でも上位の一角を占めると言っていい。

 その土台となっているのは、トランポリン王国とも言われる石川県だ。数十年前、一人の教諭がトランポリンを広めようと、最初は30、40代の女性向けの教室から裾野を広げ、地道に浸透させていった。

【次ページ】 競技全体の期待を背負う。

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