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ジョコが初めて日本で戦った意義と、
楽天OPの格を高める完璧な対応。 

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山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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photograph byHiromasa Mano

posted2019/10/08 11:40

ジョコが初めて日本で戦った意義と、楽天OPの格を高める完璧な対応。<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

貫禄の優勝を飾ったジョコビッチ。しかし今大会は強さ以上に彼の柔和な表情が目立った。

京都とお台場観光、ちゃんこ&相撲。

 来日してからは「オリンピックは重要だが、今は一戦一戦体の状態を確かめながら、このすばらしい大会で勝つことが自分のやるべきこと」と大会にまず敬意を払い、「前々から日本の文化には興味があったし、親切で思いやりがあって謙虚な日本人の姿は印象的だ。日本のもの作りの技術の高さは世界中で知られていることだし、町は清潔で、とても居心地がいい」とこれ以上は出てこないほどの褒め言葉を並べた。

 実際、日帰りで京都にも行って、京都で最強のパワースポットと言われる鞍馬山に登り、東京では両国のちゃんこ屋さんに行って土俵で相撲をとった。大会中のオフの日にもお台場のデジタルアートミュージアムなどを訪れている。

「トーナメント中はエネルギーをセーブすることも考えないといけないので、やりたいことが全てできるわけではない」と言いつつ、日本のカルチャーは相当満喫したに違いない。

テニスで訪れた国の言葉は必ず勉強。

 また、1回戦勝利後のオンコート・インタビューで「コンニチワ。キテクレテ アリガトウゴザイマス」と言い、2回戦のあとには「コンニチワ。ウレシイデス」と言った。毎回違うフレーズを覚えてファンに伝えるというのが、自分に課した宿題のようだ。

「おかしなことは言わなかったよね? 人生において僕は常に生徒だと思っている。他国で僕のことを歓迎してくれる人々に対してお返しできることの1つは、その国の言葉を話すこと。今回も、毎日少なくとも1つの言葉を覚えて気持ちを伝えたい」

 もちろん今回始めたことではない。旺盛な好奇心と挑戦欲、サービス精神が生み出す努力の結果、ジョコビッチは8つもの言語を操るといわれる達人になった。

 母国語のセルビア語に英語はもちろんのこと、フランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語、アラビア語、ロシア語……。すべてテニスで訪れた国の言葉だ。中国語も猛勉強中。インタビューでやり取りするレベルではなく単語を覚えてフレーズを増やしている段階だが、あの難易度の高い発音をそれらしく聞こえるレベルでこなしている。 

【次ページ】 東京よりも北京が選ばれる傾向。

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