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カーショウやバーランダーより凄い、
ダルビッシュの後半戦2つの成績。 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byAP/AFLO

posted2019/10/07 11:30

カーショウやバーランダーより凄い、ダルビッシュの後半戦2つの成績。<Number Web> photograph by AP/AFLO

前半戦はなかなか勝ち星がつかなかったダルビッシュだが、後半戦のピッチングはさすがの能力を見せつけた。

バーランダーを引き離す異次元さ。

 今季ア・リーグ最多勝で、通算225勝、殿堂入り確実と言われるジャスティン・バーランダーや、アの防御率1位のゲリット・コールなど、脂の乗り切った盛りの大スターたちをはるかに引き離して、ダルビッシュが次元の違う数字になっているのだ。

 後半戦のダルビッシュは13登板、81.2回を投げて118個の三振を奪う間にわずか7つしか四球を出していない。これは本当にすごい。

 ゲームログ(1試合ごとの投球成績)を見ると、7月23日のジャイアンツ戦で1つ四球を与えてから8月27日のメッツ戦まで1カ月、足掛け7試合、四球を与えていない。先発投手でこれは考えられない。

もしフルシーズンでこの成績なら。

 セイバーメトリクスでは、自責点や防御率、勝敗などの従来の数値は「運が左右しやすい数字」としてそれほど評価していない。

 それよりも奪三振、与四球を重視している。奪三振は「振り逃げ以外では走者を出さない投手にとっては最高のリザルト」であり、与四球は「絶対に走者をアウトにできない最悪のリザルト」だ。奪三振が多くて与四球が少ない投手、つまりK/BBの数値が高い投手は「最も信頼できる投手」とされているのだ。

 ちなみにシーズンのK/BB記録は、MLB公式サイトによると2014年フィル・ヒューズ(ツインズ)の11.63(186奪三振16与四球)、2位は1994年ブレット・セーバーヘーゲン(メッツ)の11.00(143奪三振13与四球)だ。ダルビッシュがフルシーズンでこの成績を上げていたら、まさにアンタッチャブルになっていたのだ。

 ダルビッシュ有が今季、突然“ピッチングのスーパーサイヤ人”になったのは、2種類のカットボール、スライダー、2シーム、カーブ、スプリット、ナックルカーブなど、9個とも10個とも言われる多彩な球種を完ぺきに操れたからだと言われる。その上に、速球の球速も95マイル前後。技でも力でも圧倒的に打者を見下ろしているのだ。

【次ページ】 33歳になる来季、さらなる活躍を。

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