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北口榛花がドーハ世陸で見せた涙。
チェコ修行と、届かなかった6cm。 

text by

及川彩子

及川彩子Ayako Oikawa

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photograph byAFLO

posted2019/10/04 07:30

北口榛花がドーハ世陸で見せた涙。チェコ修行と、届かなかった6cm。<Number Web> photograph by AFLO

北口榛花は感情を隠さない。泣いて、強くなるのが彼女の進み方なのだ。

寒さも新天地も克服してチェコへ。

 北口がチェコに来たのは今年2月。やり投げの講習会の際にチェコのジュニアコーチをしていたデイビッド・セケラックコーチの指導方法に興味を持ち、チェコに乗り込んだ。2月のチェコは氷点下10度以下という厳しい天候だったが、「北海道と同じくらいで寒かったけれど、北海道育ちなので、他の人よりも圧倒的に寒さに慣れているから平気でした」と笑う。

 2月の1カ月間、生活環境、チームやコーチとの相性、練習内容などを確かめ、帰国。日本では、練習動画をコーチに送り、遠隔で指導をしてもらった。7月に再びイタリアのユニバーシアード後にチェコに直行した。そこからはドーハに向けて練習の日々が続いた。

 チェコでの練習ではいくつかの変化があった。

 まずは投てきフォーム。

 これまでは首を傾けずに、いわゆる日本選手に多い投てきをしていたが、チェコでは「え、こんなに首を曲げていいの、というくらい傾けるんです」と言うように、いわゆるチェコ式の投てきに取り組んだ。しかし、突然すべてを変えるのは難しく、今は「日本とチェコを半分ずつくらい」と笑う。

実はウェイトが大嫌いだった。

 使用するやりも変わった。

 日本選手権からネメトという種類のやりに変更。それ以降はネメトで練習を行い、今大会でも使用した。

「ネメトは硬いので、パワーが必要。しなりが出ないので空気抵抗が少ないし、投げている選手も投げづらさを感じるんです」

 しかしパワーは確実についている。

「今までは投てき選手としてはありえないくらいウェイトが嫌いで。日本の投てき選手の中でも底辺レベル」だったというが、チェコでは投てき、走り、ウェイトの練習日がそれぞれ分かれており、質の高い練習を積むことができた。硬いやりに負けない体作りができつつある。

【次ページ】 コーチから学び、トップ選手に教わり。

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