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ダルビッシュの逆襲とカブスの苦境。
「没落」はなぜこんなに早かったか。

posted2019/09/28 11:40

 
ダルビッシュの逆襲とカブスの苦境。「没落」はなぜこんなに早かったか。<Number Web> photograph by Getty Images

9月22日、ダルビッシュは完投目前の1点リードで迎えた9回に2失点を喫し、敗戦投手に。

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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 ダルビッシュで負けては仕方がない。シカゴのファンも、ため息まじりにそう思ったのではないか。

 9月19日から22日にかけて、カブスは本拠地リグレー・フィールドに宿敵カーディナルスを迎え、最後の反撃を見せるはずだった。4連戦に全部勝てば、地区優勝の可能性はまだ消滅しない……。

 ところがご承知のとおり、4連勝したのはカーディナルスのほうだった。しかもすべて1点差ゲーム。第4戦では、絶好調のダルビッシュが8回まで1失点に抑え、勝利をほぼ手中に収めていたのに、悪夢のような逆転劇を許してしまった。

 カブスの地区優勝は消えた。ポストシーズン進出も、まず絶望的となった(25日に敗退が決まった)。私はひそかにダルビッシュのポストシーズンでの快投を期待していたのだが、それも見果てぬ夢だったか。

新球にてこずったダルビッシュ。

 新球ナックルカーヴと伝家の宝刀スライダーを織り交ぜ、ここ2カ月のダルビッシュは、奪三振の山を築いていた。7月12日から9月22日までの間に絞ると、13試合に先発し、81回3分の2を投げて4勝4敗。防御率2.76。打線の掩護がなくて勝ち星には恵まれなかったが、奪三振118、与四球7という数字がめざましい。

 被打率は1割9分9厘。前半の課題だった一発病(被本塁打の多さ)もかなり改善され、13本の被弾に抑えていた。あれほどの投球術を開幕時から見せていたら、まちがいなくサイ・ヤング賞の有力候補に入ったはずだ。

 ただ、開幕直後から7月上旬にかけて、ダルビッシュは苦しんだ。3月30日から7月3日までの成績をトータルすると、18試合に先発して、投球回数が97。2勝4敗、防御率5.01と、眼を疑いたくなる数字が並ぶ。奪三振は111個とまずまずだが、与四球49、被本塁打20という乱調は惨事に近かった。フライボール革命の影響もあるが、もっと難物だったのは縫い目の山が低くて滑りやすい新球が採用されたことだろう。

 ダルビッシュは、このボールにてこずっていた。若いころから与四球の多い投手だったが(2012年が89個で、'13年が80個)、18試合で49個という数字は多すぎる。

 そこをどう修正したのか、シーズン後半のダルビッシュは、革命的に与四球の数を減らした。13試合で7個という数値は、前半戦の約5分の1。一発病は完治したわけではなかったが、四球の走者を置いているのといないのとではダメージがちがう。実戦のマウンドに登りつつこれだけの修正ができるというのは、やはり只者ではない。来季はぜひ、年間を通して安定した成績を残し、サイ・ヤング賞レースに絡んでほしい。

【次ページ】 レスターの不調、若手の伸び悩み。

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