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ジブラルタルで生きる日本人選手。
欧州の端っこからCLを目指して。 

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佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

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photograph byShohei Tsurumi

posted2019/09/15 19:00

ジブラルタルで生きる日本人選手。欧州の端っこからCLを目指して。<Number Web> photograph by Shohei Tsurumi

サッカー選手のキャリアの形はどんどん複数化している。鶴見昌平の歩く道も、また新たな地平を切り開いている。

選手の年俸は決して高くない。

 選手の年俸は、「ピンキリ」だという。

「トップの選手で1千万円以上です。ジブラルタル人選手の場合、数合わせでいる時は年俸ゼロというのもあります。まだリーグが発展途上なので全体的に年俸は低いですね」

 ただ、ジブラルタルは租税回避地として有名で、所得税は一律10%になっており、「選手としては助かります」と鶴見は言う。

 面積が狭いので、クラブハウスやチーム独自の練習場は保持することができない。スタジアム脇の練習場がメインだが、毎日いろんなチームが練習しているので取れないことが多く、その場合はスペインに移動する。

「基本的に現地集合で、チームが用意してくれたウエアを着て1時間半ほど練習する。終わるとシャワーを浴びて、各自で帰る感じです」

 サッカーの環境的には、地域リーグと同じレベルかもしれない。

 鶴見は今、スペインのマルベージャに家族と住んでいる。もともとスペインでプレーしていたのでスペイン語圏での生活がラクなのもあるが、ジブラルタルは住居などのコストが高いのだ。

 そのため、ジブラルタルで練習する時は国境を越えていくことになる。車で約45分程度だが、「夏のバカンスシーズンになるとかなり混雑する」と鶴見は苦笑した。

目標はCLの予備予選、そして……。

 鶴見が所属するエウロパ・ポイントは、今シーズン、新オーナーの下で再スタートを切った。目下、最大の目標は鶴見と同じく、チャンピオンズリーグに出場することだ。

「僕はスペインでの下部リーグの経験しかないんですが、そこだと国際大会を経験することができないですし、その舞台を通してステップアップすることができない。

 個人的にチャンピオンズリーグに出場したいのもありますが、そこに出場するとリンカーンがセルティックと試合したように、強豪相手にアピールできるチャンスが広がるんです。チームが強くなって、チャンピオンズリーグでレベルの高いチームと対戦できれば若い選手に活躍のチャンスを与えることができるんです」

 鶴見が自らの夢とともに「実現したい」と共感したのが、オーナーが推進する「若手の育成」のプロジェクトである。そのためには、まずエウロパ・ポイントを優勝争いができるチームにしていく必要がある。

「今シーズンは、まず8位より上の順位を目指していく。そうして次のシーズンでは資金を増やして選手補強を行い、自分もレベルアップして優勝争いをしたいですね」

 優勝を狙えるチーム作りのために、どうやってスポンサーを獲得し、どうチームを強化していくべきなのか。鶴見は、沖縄SVを立ち上げた高原直泰の活動に注目し、参考にしているという。

【次ページ】 なりたいのは、オーナー兼選手。

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鶴見昌平

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