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甲子園では珍しい戦略的な継投策。
中京学院大中京の4人の投手たち。

posted2019/08/16 17:45

 
甲子園では珍しい戦略的な継投策。中京学院大中京の4人の投手たち。<Number Web> photograph by Kyodo News

背番号1を背負う不後祐将を含めた中京学院大中京の投手たちに、高校野球特有の悲壮感はない。適材適所で勝つことが彼らのスタイルなのだ。

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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Kyodo News

 指揮官の言葉がこの日の勝因を物語っていた。

「それくらいのことをしないと、東海大相模さんには勝てませんからね」

 優勝候補の一角と目されていた東海大相模が敗れた。金星を挙げた中京学院大中京は、指揮官・橋本哲也監督の采配で形勢を逆転して見せた。

 橋本監督が「そのくらいのこと」と言ったのは、総勢4人の投手を送り込んだ継投策のことだ。

 ともに複数の投手を擁して、県大会からここまで勝ち上がってきた東海大相模と中京学院中京。試合の焦点はブルペン陣をどう使いこなすかだった。

普段とは違う継投を決意した理由。

 中京学院大中京は不後祐将、東海大相模・石田隼都の先発で始まった試合は投手戦に。5回を1-1で折り返したゲーム展開から、先に抜け出したのは東海大相模だった。

 6回裏、東海大相模3番の井上恵輔が左翼スタンドに運ぶソロ本塁打で勝ち越すと、さらに1死から5番の金城飛龍が内野安打でチャンスメイクして追加点を狙った。

 しかしここで、中京学院大中京の橋本監督が動いた。

 先発の不後を降板させてレフトに残し、右サイドスローの村田翔を投入したのだ。

 2回戦の北照戦も継投で勝ち抜いた中京学院大中京は、先発・不後の次は、本格派右腕の赤塚健利を登板させ、元謙太(げん・けんだい)で締める事が多い。ところがこの場面で、橋本監督はその勝ちパターンと異なる手を打ってきた。

 その起用理由を橋本が明かす。

「相模さんは強打といいますか、強振してくる打線。村田は変則モーションなので、そこでタイミングを崩しておこうかなと思って起用しました。村田には『お前は東海大相模に一番通用している投手』だと準備させておきました」

 2死二塁のピンチで登板した村田は、7番の強打者・西川僚祐をセカンドゴロに。これは二塁手の悪送球によって1点を失ってしまったが、なんとかこの回を2失点にとどめた

【次ページ】 レフトにいた不後が再びワンポイントに。

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