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女子W杯優勝でアメリカに吹く風。
政治とスポーツの関係性を考える。 

text by

ナガオ勝司

ナガオ勝司Katsushi Nagao

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photograph byGetty Images

posted2019/07/20 11:40

女子W杯優勝でアメリカに吹く風。政治とスポーツの関係性を考える。<Number Web> photograph by Getty Images

スポーツと政治の関係性は、アメリカと日本で大きく異なる。参考にできる点はどこにあるのだろうか。

サッカー女子アメリカ代表のキャプテンが。

 いずれにせよ、その勇ましい風がこのところ、アメリカのスポーツ界にも吹き始めている。いや、正確には今までも何度か吹いていた風が、スポーツ界の大きなイベントによって再生されたといってもいいだろう。

 フランスで行われた女子サッカーのワールドカップで優勝したアメリカ代表のキャプテンであるミーガン・ラピーノーは、自分が女性であり、同性愛者であることを前提とした言動をしてきた人だ。

 とても保守的な人々からすると、彼女は「大統領に対して批判的な意見を述べるサッカー選手」であり、「そんなにアメリカ合衆国やアメリカ人であることが嫌ならば、出ていけ」と見当違いなことを言われる「厄介な存在」になっている。

 それでも彼女はヒステリックに反応することを極力控え、むしろ冷静かつ、用意周到にそれらの批判に対処している。

アスリートであることを超えて。

 ニューヨークで行われた優勝パレードの際のスピーチが、とても印象的だった(以下は私の解釈による翻訳なので、人によっては違う意味に受け取る人もいるはずなので、是非ともYouTubeなどにアップされている英語の原文を聞いて欲しい)。

「我々はもっと良くならなきゃいけない。我々はもっと愛し合うべきで、もっと憎しみを少なくしなきゃならない。もっと(他人に)聞き入って、(自分が)話すのを少なくすべきだ。そして、それは我々の責任だと知るべきなのです。ここにいるすべての人たち、ここにいないすべての人たち、ここにいたくないすべての人たち、賛成するすべての人たち、反対するすべての人たち、すべての人々にこの世界をより良い場所にする責任がある」

 彼女は訴えかけた。

 自分たちにはただのサッカー選手やアスリート以上のことができる、と。

 我々にも、ただのサッカー・ファンやスポーツ好き以上のことができるはずだ、と。

【次ページ】 「この会話こそが次へのステップ」

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ミーガン・ラピーノー

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