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<「2019世界柔道」直前インタビュー vol.7>
己を信じて信念を貫く。

posted2019/08/08 11:30

 
<「2019世界柔道」直前インタビュー vol.7>己を信じて信念を貫く。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

左から、男子60kg級・永山竜樹(了徳寺大学職)、団体男子73kg級・橋本壮市(パーク24)。

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

PROFILE

photograph by

Takuya Sugiyama

8月25日に開幕する「PARK24 GROUP presents 2019世界柔道選手権東京大会」(以下、2019世界柔道)に挑む日本代表全23選手。それぞれの胸の内に迫る全7回連載の最終回。

「信は力なり」を地で行くように、自らを貫き、あきらめることなく歩み、今日へとたどり着いた。

 大舞台を視野に歩もうとする彼らに、自らの歩みに迷いはない。

 男子60kg級を担う1人、永山竜樹の笑顔には、充実感がうかがえる。昨年11月のグランドスラム大阪、年明けて2月のグランドスラム・デュッセルドルフと2つの国際大会で優勝すると、4月の全日本選抜体重別選手権も制した。

「最近は思い切って、楽しく柔道することを心がけて臨んでいるので、それがいいのかなと思います」

 好調の要因は、2度目の出場となった昨秋の世界柔道にある。銅メダルに終わったあと、永山は試みを変えた。

「練習量を増やしました。大学に入ってから量より質を考えてやっていました。でも、高校時代まで、試合前の練習量が試合の自信になっていたことを思い出して、練習量もしっかりやってその中で質もあげるようにしました」

 その成果がこのところの好成績に現れている。

60kg級でも小柄な永山竜樹の強み。

 永山は、早くから将来を期待される存在だった。中学3年生のとき世界カデ選手権で優勝し、大学1年で世界ジュニア選手権を制した。

「今、振り返れば、大きいところを勝ってきて、順調に進んで来ることはできたと思います。勝っている中でも負けた大会があるので、その悔しさが原動力になっていますね。あとは大きい選手になかなか勝てず、絶対勝ちたいという思いがずっとあったことです」

 自身が語るように、男子60kg級でも小柄な部類に入る。

「小学校のときから大きい選手とばかり練習をやってきました。だから、高校生のときに55kg級から60kg級に変わったときも、これくらいの体格差ならやれる、と思えました」

 背負投、袖釣込腰などを武器に、国内外でしのぎを削ってきた。海外の選手に対しては、2018年以降、一度も負けていない。

「海外の選手は力で来るので、投げやすいというところはあります」

 その活躍からか、「よく、『小さな巨人』って言われます」という。

「ここだけの話、というわけではないですが、全日本選手権で優勝したいというのが一番の目標です。重量級の選手を投げ飛ばして、本当に、小さな巨人と言われる選手になりたいと思います。ただ、さすがに来年は挑戦しないですが」

 来年と言えば、東京五輪が控える。まずはそこだけを見据えている。

「自分にとっても憧れの舞台ではあるけれど、一番は支えてくれた両親とか、応援してくれる人のために獲りたいタイトルです」

高藤直寿も壁とは思わずに。

 出場するためには、2019世界柔道が重要であることを自覚する。

「しっかり持って一本を獲る自分の柔道で、観ている人がすごいな、きれいだなと思う試合をしたいですね」

 男子60kg級は、永山のほか、高藤直寿も出場する。リオデジャネイロ五輪銅メダリストであり、2017、2018年世界柔道王者でもある。そして昨年の世界柔道準決勝で敗れた相手でもある。

「でも、そんなに壁だと思ったことはないですね。最初の頃は、高藤先輩に勝ちたいという気持ちはありましたが、今はどんな相手でも、自分の柔道をして、勝って自分が一番強いということを証明したいという気持ちです。特定の選手を意識することはまったくないです」

 それもまた、充実を示している。何よりも揺るがない芯がある。

「ちっちゃい頃から、授業なしで柔道ばっかりやりたいなと思っていました。4月に了徳寺学園に入り、24時間強くなることだけを考えて生活していけるので、本当に楽しいです。柔道が楽しい、という気持ちは変わったことがないですね」

 楽しいという思い、同じ階級でも小柄だったからこそ磨いた技術を信じ、2019世界柔道に挑む。

【次ページ】 橋本壮市が歩んできた道は異例だ。

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