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トライアスロン・谷真海が
パラスポーツに抱く熱き思い。 

text by

林田順子

林田順子Junko Hayashida

PROFILE

photograph byShigeki Yamamoto

posted2019/06/05 11:00

トライアスロン・谷真海がパラスポーツに抱く熱き思い。<Number Web> photograph by Shigeki Yamamoto

気軽な気持ちで会場に来てほしい。

 右足が義足というアンバランスな体で競技をしているので、パラトライアスロンでは体幹、体の使い方、柔軟性がすごく影響してきます。そのため、水泳、ラン、バイクの他に、フィジカルトレーニングも重要視していて、4つのトレーニングを日々回している感じです。

 大会では、私たちは全力で戦いますが、皆さんにはビール片手に……ぐらいの気軽な気持ちでまずは会場に来てほしい。パラスポーツって、何にも感じない人は多分いないのではないかと思うぐらい、ものすごくインスパイアされるんです。こんなこともできるんだ、こんな可能性もあるんだ、思ったよりも速いスピードで走るなとか、障害者に対する見方が変わるはずです。それと同時に、もっと自分も頑張れるんじゃないかとか、自分の可能性を最大限に引き出して生きているかと自身に問いかけたりして。そういうパワーをもらえるのがパラスポーツだと思っています。

 私自身もそうだったんです。初めてパラリンピックに出場したときには、本当にたくさんの刺激を受けました。義足になったことは自分にとってはすごく大きな出来事でしたが、自分よりも重い障害を持つ選手たちが「障害? そんなのないよ」という感じで、前しか向いていないような堂々とした雰囲気を漂わせていて。

 普通に生きているよりも人生をエンジョイしているような人がたくさんいて、私はすごく力をもらいました。私もこういう生き方をしていこう、自分にないものを嘆いても仕方がないから、自分にあるものを最大限に出し切って生きていく、そういう生き方をしたいと心から思いました。

 2020年には選手だけでなく、観客やサポートの方々まで、世界中から障害のある方が日本を訪れます。都内はほとんどの施設にエスカレーターかエレベーターができて、この何年かでハード面のバリアフリー化はすごく進んだと感じています。そうなると課題となるのは、ソフト面、心のバリアフリーだと思うんです。障害者に接する機会が増えれば、慣れてコミュニケーションも取りやすくなるでしょう。心の垣根を取り除いて、みんなで一緒に尊重しあって生きていける。パラリンピックがそのきっかけになればいいなと思っています。

谷真海

谷 真海Mami Tani

1982年3月12日、宮城県生まれ。大学在学中に骨肉腫を発症、右足膝下切断後は義足のアスリートとして走り幅跳びでパラリンピックに3度出場。結婚、出産後はトライアスロンに転向し、パラトライアスロン世界選手権ロッテルダム2017で優勝、パラトライアスロン世界選手権ゴールドコースト2018で3位。サントリーホールディングス勤務。

新しいナビゲーターに俳優の田辺誠一さんを迎え、番組デザインもリニューアル。アスリートの「美学」を10の質問で紐解き、そこから浮かび上がる“人生のヒント”と皆さんの「あした」をつなぎます。スポーツ総合誌「Number」も企画協力。

第58回:谷真海(トライアスロン)

6月7日(金) 22:00~22:24

パラトライアスロンの谷真海選手は高校までは水泳や陸上、大学時代はチアリーディングに励んでいました。しかし18歳の時に骨のがんである骨肉腫を発症し、右足膝下を切断することに。落ち込む彼女に母が送った言葉とは? そしてトライアスロンを始めたきっかけやパラスポーツの魅力についても語ります。

第59回:渡邉彩香(ゴルフ)

6月14日(金) 22:00~22:24

プロゴルファーの渡邉彩香選手は20歳の時にツアー初優勝。翌年は2勝、トップ10に17回も入る安定感で年間獲得賞金は1億円を突破しました。リオ五輪出場を懸けた2016年の全米女子オープンの勝負所でまさかの池ポチャ。以降は苦しい戦いが続く彼女に、当時の心境や現在、そしてこれからをお聞きします。

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