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【NSBC第3期 スペシャルトーク】
池田純×松下浩二Tリーグチェアマン
「Tリーグ、1年目を徹底的に総括する」
 

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posted2019/06/04 08:00

【NSBC第3期 スペシャルトーク】池田純×松下浩二Tリーグチェアマン「Tリーグ、1年目を徹底的に総括する」<Number Web> photograph by Sports Graphic Number

松下チェアマン(右)は、Tリーグ1年目を「70点」と総括。残り30点プラスアルファについいて、池田氏とのトークはアイデア満載だった。

選手の意識は変わったが、もう一段階上へ。

池田 それから試合中、出番を待っていたり、出番を終えた選手たちがどうしてるんだろう、と思ったら、客席みたいなところにいて、お客さんと同化しているようにも見えました。チームの選手などを応援したりはしているのですが、お客さんと同じように座っている印象がありました。もったいないように感じました。

松下 確かに、試合していない選手は観客みたいな位置にいます。

池田 いろいろルールはあるのだろうけど、「ベンチ」があってもいいのではないでしょうか。コート内に選手の後ろに「ベンチエリア」を新設して、チームが一体となって応援しているシーンをつくってもいい。そのベンチワークを眺めるのもお客さんの楽しみのひとつとして加わっていくような。
 お客さんには、視点をあちこちに変えてもらいながら観戦を楽しんでいただいた方がいい。監督の仕草もそうだし、次の選手がアップしている様子もそうですし、試合以外の景色の中に、どれだけたくさん魅力的なものを作っていけるかが、「次の観戦機会」のためには大事だと思います。
 試合の運営、演出などはリーグ側でやっているんですか?

松下 今はそうですね。演出面では、チーム側から「やりたい」という声が出た時に、それを組み入れている状況です。池田さんが観てくださった試合では、木下アビエル神奈川が主導して演出をやってくれました。

池田 参加した選手からは、どんな声が上がってきていますか。

松下 最初は「Tリーグには参加しない。試合しないよ」というトップ選手も正直いたんですけど、最終的には本当に多くの選手が参加してくれました。ほとんどすべての選手から、「楽しかった」「参加してよかった」という声を聞けて、よかったな、と思っています。
 彼らからしても、対戦相手はレベルが高いので、練習でやってきたことをいろいろ試す場としても活用してくれたみたいです。あとは、観客がたくさん入っている試合だと「緊張しちゃいました」という声もありましたね。選手たちは、期待していた以上に頑張ってくれましたよ。感謝しています。

池田 選手の意識はそこからもう一段階上へと変わっていく必要があるのでしょうね。正直に言えば、ファンサービスの意識が、まだまだだなと感じざるをえませんでした。対戦相手との握手もちゃんとしていなくて、パンと手と手を合わせるだけ。そういう流儀なのかもしれませんが、ちょっとおざなりだなあ、と。
 ファンが見ているし、子供も見ているわけで、その瞬間瞬間もファンを獲得する瞬間として活用したほうがよいのでは、と感じました。さきほどの「視点」の話でいえば、そこもまたお客さんは観ているんです。ボールをファンに渡したり、子供たちと接したりするときの、「今日は来てくれてありがとうね!」という仕草も、もっともっとプロ化がこれから進んでいけばいくほど、リーグ主導で教育や指導なども必要になっていくのだろうな、と。

松下 お客さんが身内しかいない競技会の気分がまだ抜けていないのかもしれません。

池田 ベイスターズの時、選手たちとしょっちゅうコミュニケーションして、まず選手たちにはファンサービスの部分を徹底して変えてもらえるようにしたんです。「ファンが近くにいたら、そこに行って、手を握って、『今日はありがとう。また来てくださいね』と言ってニッコリしてこい。そうすればその人は君のファンになる。また球場に来てくれるし、そのときは君のグッズを買ってくれるかもしれない。もし買ってくれたら、そのグッズ代のうちの数パーセントは君の収入になるぞ」といったように。
 実際そうやってファンは増えていくものなんです。だからこの前も、もし私の目の前に石川佳純選手が来て、握手してくれて「また来てくださいね」と言われてしまったら、否が応でも必ずまた会場に足を運ばなくてはいけなくなってしまいますからね(笑)

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松下浩二

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