球体とリズムBACK NUMBER

中田英寿の元同僚ラムシが明かした、
ヒデの素顔とザックジャパン攻略法。 

text by

井川洋一

井川洋一Yoichi Igawa

PROFILE

photograph byYuki Suenaga

posted2019/05/12 17:00

中田英寿の元同僚ラムシが明かした、ヒデの素顔とザックジャパン攻略法。<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

中田と共に戦ったパルマ時代や日本と対戦したブラジルW杯のエピソードを語ってくれたサブリ・ラムシ氏。

フットボールには規律が必要。

──あなたにとって、指導者としての初の仕事が代表監督でした。

「ポジティブな記憶しかないよ。私には経験が少なかったが、協会は全幅の信頼を置いてくれたし、チームに関することには一切口出ししなかった。私はまず、チームの規律を重視し、グループの団結力を生み出そうとした。

 最初の代表の練習には、ドログバが3分遅れてきたのだが、私は時間通りにバスを走らせた。選手たちは驚いていたが、チームのルールは全員が守らなければならず、例外は作りたくなかった。フットボールには、クオリティーと同じくらい規律も必要だ。それはフランスでも日本でも、どこでも同じさ。規律がなければ、強いチームにはなれない」

──ブラジルW杯はどんなものでしたか?

「早期敗退はしたけれど、実に素晴らしい経験になった。我々も初戦をもっとも重視していて、日本のことをよく研究していた。本田は強烈な左足を備えていて、凄まじいFKを放ち、香川と長友は左サイドで見事なコンビネーションを披露する。そんな個性がベースにあった日本は、ザッケローニ監督のもとでひとつに団結していた。チームスピリットを感じさせる、とても強力な相手だったよ。

 日本もコートジボワールもグループステージで敗退してしまったが、個人的にはあのグループの上位はその2カ国だったと、今でも信じているよ。また日本のメディアのこともよく覚えている。彼らは対戦相手の我々を開幕2、3週間も前から追い続けていた。開幕戦の相手だから、相当警戒していたんだと思う」

アジアカップは「驚かされた」。

──あなたは現役時代の晩年と指導者として、のべ数年間にわたってカタールで過ごしています。先のアジアカップでカタールが優勝したことには、驚きましたか?

「率直に言って、驚かされたよ。若い選手たちで構成されたチームだったしね。優勝した彼らを大いに讃えたい」

──開幕前にはカタールでプレーするシャビ・エルナンデスが、同国の優勝を予想しました。これはあなたにも予想できたことでしょうか?

「いや、私にはできなかった。おそらくシャビとカタール代表選手だけがそう信じていたんじゃないかな。カタールは小さな国だけど、フットボールに非常に力を入れている。その努力が成果となって表れたんだと思うよ。私が最初に選手としてカタールに行った2006年には、現在のような最新鋭の設備などなかった。それが今では、欧州にも見劣りしないほどのスタジアムやトレーニング場がある。2022年のW杯も楽しみだね」

──カタールは今後、アジアの盟主の座を維持できるでしょうか?

「それは簡単ではない。日本や韓国、オーストラリア、サウジアラビアらも巻き返して来るはずだからね。懸命な努力をずっと続けていかないかぎり、アジアカップのタイトルをキープすることは難しいだろう」

(取材協力:アントニー・グルメル、ミシュゼフスキ・リュドヴィック、フローラン・ダバディ)

BACK 1 2 3
サブリ・ラムシ
中田英寿
アルベルト・ザッケローニ
パルマ

海外サッカーの前後の記事

ページトップ