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西岡良仁は男子テニス界の個性だ。
身長170cmでトップ100という自負。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2019/03/14 17:30
西岡良仁は途中棄権でベスト8進出はならなかったが、170cmでも世界と伍せることを証明してくれている。
2年前はワウリンカを追い詰めた。
「(マスターズの)ベスト16の対決としては、将来もう来ないくらいのチャンスだと思っていました。それは、ここまで自分でつかんできたものだった」
試合が終わって3時間半後、ようやく記者会見に姿を見せることができた西岡は、もう踏ん切りがついたような表情で話した。
このインディアンウェルズは、2年前に予選から出発して今回と同じ16強入りした思い出の場所だ。世界ランク21位のイボ・カルロビッチ、14位のトマーシュ・ベルディヒとトッププレーヤーを連破し、当時3位だったスタン・ワウリンカさえ追い詰めるドラマチックな勝ち上がりだった。
しかし、翌週のマイアミ・マスターズで左膝の十字靱帯を断裂。インディアンウェルズでのタフな連戦で肉体に負った深刻なダメージと無関係ではなかっただろう。結局9カ月もの間、戦列を離れなくてはならなかった。
ATPに対して、もの申したことも。
あの苦い出来事、そして今回の残念な結末からも、課題は明白だ。今年の全豪オープンではこう話していた。
「僕たちのように(小柄な選手は)ラリー戦でポイントをしっかり組み立ててポイントを取るプレースタイルを持ち味としているので、必然的に体力を使う。連戦になるとけっこうタフになるので、どれだけ早く試合を終えられるかというところにかかってくる」
そういうプレースタイルが「おもしろいと思ってもらえればうれしい」と感じている一方で、185cm以上が〈普通〉である男子テニス界で少数派の自分たちへの理解が浅いことを嘆きもする。ちなみに、今大会の16強の中で西岡がもっとも小さいのは言うまでもないが、185cmに満たない選手は西岡を含めて4人しかいない。
昨年のトロントで予選2試合をいずれもフルセットで勝ち上がった西岡は、本戦1回戦で世界ランク13位のパブロ・カレーニョブスタを相手に第1セットを0-6で落として棄権したのだが、連日の試合を強いられたことに対してATPにもの申したという。
「『僕らがどれほど体を酷使してるか、あなたたちにはわからないでしょ?』みたいなことを怒って言いました。(ATPは)まあちょっと考えるとは言ってましたけど……」
切実な要望ではあるが、冷静になってみれば、無茶な要望であることくらい西岡もわかっただろう。