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レッドブル・ホンダの命運握る男、
M・フェルスタッペン21歳の野望。 

text by

今宮雅子

今宮雅子Masako Imamiya

PROFILE

photograph byNanae Suzuki

posted2018/12/26 17:00

レッドブル・ホンダの命運握る男、M・フェルスタッペン21歳の野望。<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

今季2勝を挙げ、ドライバーズランキング4位。貴重な特写に笑顔を見せてくれた。

F1デビューを果たしたのは17歳。

 '15年、レッドブルの姉妹チームであるトロロッソからF1デビューを果たしたときには17歳。4輪レースの経験はわずか1年で、彼の戦績には何に関しても“最年少”という言葉が添えられ話題となる一方、ミスをすれば一部のドライバーから若さを批判する声が挙がった。

 たしかに、若手の起用に特化したレッドブルの方針には、プラス/マイナスの両面があり、ときにはドライバーに大きな負担を強いてしまう。ただし、フェルスタッペン自身にとって「若すぎる」という批判ほど理不尽なものはなかった。F1のシートをオファーされて、断れるドライバーなど何処にいるだろう? たとえそれが16歳の夏であっても――。年齢は彼自身の罪ではない。彼をF1に迎えたのはレッドブルであり、スーパーライセンスを発給したのはFIA(国際自動車連盟)だ。そして何より大切なのは、17歳のドライバーにF1を操る技量が十分に備わっていたことだ。

“最年少記録”と“移籍初戦の快挙”。

 '16年、第5戦スペインGPでレッドブルに昇格したフェルスタッペンは、即座に初優勝を飾った。18歳のグランプリ勝利は“最年少記録”“移籍初戦の快挙”と大々的に報じられた。以後、'18年日本GPまでに4勝を挙げている。

 マックス・フェルスタッペンというドライバーを表現する際、最初に浮かぶのは速さ。そして攻撃性。コース幅をいっぱいに使い、レッドブルの空力性能を最大限に活かすドライビングの長所は、予選のアタックにおいて顕著に表れる。今シーズンは大半のグランプリでチームメイトのリカルドを上回ってきた。

 “攻撃性”に関しては、フェルスタッペンのスタイルが両刃の剣ともなる。もしも、デビュー当時のミスが若さや経験不足に起因するものだったら、4年目のF1を走るマックスからその粗さは消えていたはずだが、いまも傾向は変わらない。抑えようもない自我が、しばしば、ライバルの走行ラインと交錯してしまう。

 '18年のシーズン序盤、彼はデビュー以来最悪のレースを重ねた。第2戦バーレーンGPではスタート直後のターン1出口でハミルトンと接触、第3戦中国では高速のターン7でアウトからハミルトンに仕掛けてオーバーラン。ポジションを落とした後、セバスチャン・ベッテルを抜こうとして接触、10秒加算のペナルティを負った。

 そして第4戦アゼルバイジャンでは真後ろに迫るリカルドに対して際どいブロック行為を繰り返した末、最後は高速ストレートからの大きなブレーキングで走行ラインを変え、避けきれなかったリカルドと接触。レッドブルは2台リタイアという最悪の結末を迎えた。競技会審査委員会に召喚された際“接近し過ぎた自分にも非があった”旨の証言をしてチームメイトのペナルティを回避したリカルドは大人と評され、批判はフェルスタッペンに集中した。ただし、確執は生まれなかった――外野が何を言おうと、ふたりは互いに最大の理解者なのだ。

【次ページ】 「自分を変えるつもりはない」

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