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ミシャはなぜ札幌で愛されるか。
北海道にはロマン主義がよく似合う。 

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茂野聡士

茂野聡士Satoshi Shigeno

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photograph byJ.LEAGUE

posted2018/12/04 07:00

ミシャはなぜ札幌で愛されるか。北海道にはロマン主義がよく似合う。<Number Web> photograph by J.LEAGUE

理想を掲げ、成績まで叩きだしたミハイロ・ペトロヴィッチ監督に対して、札幌サポの支持率は圧倒的だ。

北海道はロマンチシズムの土地?

 その答えが出ず一夜明け、札幌市内をウロウロしていたところ、北海道大学の博物館で1つのヒントに出会った。そこには「北大の学風」として、真っ先に掲げられていた一節があった。

「大自然に育まれた大らかなロマンチシズム」

 これなのかもしれない。

 よく言われることだが、サッカー監督にはロマンチスト型とリアリスト型がいる。ピッチ内での美しさを追求するのが前者で、勝利を最優先するのが後者。もちろん両方のバランスが取れていて、ハイレベルであればパーフェクトだが、人間はAIではないのだから、どこかしらで偏りが出る。

 ミシャはどちらのタイプかと問えば、サッカーファンの99%がロマンチストと言うだろう。

“弱者の兵法”ではない方法論。

 ロマンという言葉の意味をいま一度調べると、「夢や理想にあこがれを持つこと」と書いてある。間違いなく、ミシャはこれまでもずっと理想を追求し、独特のスタイルを開拓してきた。それだけに独創的な攻撃がハマった時の爽快感は強い。そして機能不全に陥った時の無力感も。

 これまでの札幌は、堅守速攻という名の“弱者の兵法”で強豪に立ち向かうほかなかった。それがミシャによる能動的なサッカーに感情を揺さぶられ、サッカーへの好奇心を呼び起こされたのは間違いない。

 そんな楽しさとともに、コンサドーレにはJ1とJ2を行ったり来たりで苦しんできたクラブ史、もっと言えば開拓精神にあふれた北海道の歴史がある。だからこそ大らかさをもって認められているのではないか。

【次ページ】 理想と現実が一致するとしたら……。

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ミハイロ・ペトロヴィッチ
北海道コンサドーレ札幌

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