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ボルシアMGの斬新な可変式サッカー。
ブンデス2位の攻撃力と伝統の重み。 

text by

島崎英純

島崎英純Hidezumi Shimazaki

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photograph byUNIPHOTO PRESS

posted2018/12/02 08:00

ボルシアMGの斬新な可変式サッカー。ブンデス2位の攻撃力と伝統の重み。<Number Web> photograph by UNIPHOTO PRESS

ドイツきっての名門、ボルシアMG。ドルトムント追撃の一番手となれるか。

アザールの弟がナンバー10。

 第12節の対戦相手は、原口元気、浅野拓磨が在籍するハノーファー。ハノーファーがノーマルな4-4-2を採用したのに対して、ヘキンク監督はマインツ戦と同じく4-1-2-3を用いました。

 ただ、今回は左SBのベントではなく、右SBのミヒャエル・ランクが激しく上下動して、時には味方FWと横並びになっていました。このチームのSBは試合によって攻撃に特化する選手が入れ替わっているようで、実に興味深い。

 右ウイングの背番号10が挑戦的な仕掛けをする選手で、そのプレーフォルムが誰かに似ているような気がしました。しばし黙考して『あっ!』と閃いたのはエデン・アザール。慌ててメンバー表を見ると10番は『Thorgan Hazard』。はい、エデンの弟トルガンでした。兄弟は、仕草や雰囲気が似るものなんですね。勉強不足ですみません……。

小柄なGKゾマーは足元が巧み。

 今季のボルシアMGは、攻守転換のスピードが恐ろしく速いです。自陣でボールを奪うと前線の3人が一斉に敵陣の各エリアへ飛び出し、それに呼応してバックラインが強烈に押し上げを図って中盤での優位性を生み出します。

 その中心に位置するドイツ代表のDFマティアス・ギンターの統率力は見事ですが、このハイラインを維持できる最大の要因はスイス代表のGKヤン・ゾマーだと思います。

 183cm・79kg。GKとしては非常に小柄なゾマーはボールテクニックが優れていて、相手プレスを難なくいなして高精度のフィードやスローイングで攻撃の起点になります。多くの名GKを輩出し、レベルも高いブンデスリーガにおいて、ゾマーの活躍は特筆もの。彼は、ヘキンク監督が掲げる攻撃サッカーに欠かせない戦力と言えます。

 また、今季のボルシアMGは相手が生むスペースを見極めるプレーアクションが非常に鋭いです。先制を許しながら前半終了間際に逆転した2点目のゴールは、先述の『疑似FW』右SBのランクが決めたもの。攻守で陣形が変化する可変式の狙いは、相手のギャップを突くことにあるのです。

 また、前半には相手ペナルティーエリア内に8人の選手が入り込むシーンがありました。ハーフライン付近ではGKゾマーが仁王立ち。かなりハイリスクな攻撃態勢ですが、狭いエリアで何人もの選手がパスワークに関与した末にアザールが強烈なシュートを打ち込み、ハノーファーのGKミヒャエル・エッサーが必死でセーブしていました。 

【次ページ】 バイエルンに快勝、勢いは本物。

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