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アルゼンチン中が溺愛、カニーヒア。
ブロンド長髪と素朴さは当時のまま。
posted2018/05/29 08:00
text by
藤坂ガルシア千鶴Chizuru de Garcia
photograph by
Getty Images
1990年にイタリアで開かれたW杯をライブで観戦した人の多くは、アルゼンチン代表で一際輝いていたクラウディオ・カニーヒアに魅せられたことだろう。
端正な顔立ち、乱れたままのブロンドのロングヘアーを輪ゴムでとめるという無造作な風貌は、サッカー選手というよりもロックスターのような艶かしさを放っていた。
だが、そんな外見の魅力以上にサッカーファンの心を奪ったのは、卓越した運動能力を駆使した痛快なドリブル突破だった。
'80年代に一世を風靡したスプリンター、アメリカのカール・ルイスのニックネームにちなみ「El Hijo del Viento(風の子)」と名付けられ、対戦したディフェンダーたちに「カニーヒアを止めるにはファウルを仕掛けるしかない」と言わせたほどの俊足(実際に何度もファウルで止められた)を誇った。
飲むのはシャンパンだけのセレブ妻。
スピードを活かしたチャンスメイクだけでなく、もちろん、優れたシュート技術で自ら得点を決めることもできた。
'90年W杯の決勝トーナメント1回戦、因縁のブラジル相手に奪った決勝ゴールは、'86年W杯イングランド戦でのディエゴ・マラドーナによる「神の手ゴール」と5人抜きゴールに次ぐ感動の瞬間として、アルゼンチンの人々の心に刻まれ、英雄として溺愛され続ける要因にもなっている。
カニーヒアは、ゴージャスで贅沢な生活を好む妻マリアーナ・ナニスでも有名だった。飲むのはシャンパンのみ。バカンスはモナコで過ごし、フランスから取り寄せるミネラルウォーターで飼い犬を洗い、3人の子どもたちにスイスで教育を受けさせたいと豪語するマリアーナの強烈なキャラクターについては、私も日本のサッカー専門誌のコラムでよく取り上げていた。
だが、そんな夫人を持ちながらもカニーヒア自身は飾らず素朴な性格で、取材の度に驚かされ、惚れ直したものだ。