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村岡桃佳、開花のパラリンピック。
ソチで発した「練習したいです」。
posted2018/03/18 07:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Getty Images
開花と言っていいだろう。
村岡桃佳は、平昌パラリンピックで圧倒的な輝きを放っている。
競技初日となった最初の種目の滑降で銀メダルを獲得すると、スーパー大回転と複合で銅メダルを手にする。
そして3月14日に行なわれた大回転ではついに金メダルを得たのである。
その滑りは圧倒的だった。1本目にただ1人13秒台となる1分13秒47で1位になると、2本目はさらにタイムを縮める1分13秒06をマーク。終わってみれば、合計タイムで2位に2秒71と大差をつけ、堂々優勝を果たした。定評のあるターンの技術、旗門により近いライン取り、滑りの内容そのものも、他の選手を寄せつけないものであった。
そして21歳での金メダル獲得は日本選手としては冬季パラリンピック史上最年少、女子の金メダルは2006年トリノ大会の大日方邦子、小林深雪以来という記録ともなった。
ソチを終えて応えた「練習がしたい」。
村岡にとって平昌は、17歳で出場したソチに次ぐ2度目のパラリンピックだ。ソチでは大回転での5位入賞が最高成績だから、大きな飛躍と言ってよい。原点となったのは、そのソチでの思いだ。
ソチ最終種目だった大回転を終えたあと、やりたいことを尋ねられ、村岡はこう話している。
「練習がしたいです」
初めてのパラリンピックで、メダルが獲れる力があるとは考えていなかった。だが、国内外の選手たちの滑りを目の当たりにして思ったのは、「先輩たちのような滑りがしたい」という思いだった。先輩たちとは、森井大輝ら日本男子の選手を指していた。
日本の男子は、ソチで狩野亮と鈴木猛史が金メダル、森井が銀メダルを獲得したように、世界でもトップレベルにある。大舞台での体験は、あらためてより高いレベルを目指したいという思いをかきたてた。そのとき、身近にはよい手本があった。