酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
サファテと松井裕樹の成績がエグい。
50セーブに0点台、でも実は対照的。
posted2017/09/14 07:00
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Kyodo News
Numberの読者各位には、よもや「江夏の21球」をご存じない人はいないだろう。
1979年、日本シリーズで広島の救援投手江夏豊が、近鉄相手に逆転サヨナラのピンチを切り抜け、見事チームを優勝に導いた。その渾身の「21球」をつぶさに描いた故・山際淳司氏のドキュメントだ。
翌年の「Sports Graphic Number」創刊号に掲載され、スポーツノンフィクションの世界に新たな境地を拓いた金字塔だ。
今から思えば、このドキュメントは「救援投手」のステイタスを高めるうえでも、決定的な役割を果たしたと思う。
沢村栄治の頃から、日本の野球は「エースが投げて勝つ」が本筋とされた。救援投手というのは、先発完投できない投手が仕方なく務める「端役」のような扱いだった。
セ・リーグを代表する豪腕投手だった江夏が紆余曲折を経て救援投手になり、「江夏の21球」というドラマを演じたことで、救援投手は「投手のもう一つの花形ポジション」として世間に広く認知されたのではないか。
サファテがプロ野球史上初となる50セーブを記録。
それから38年、今季は日本の救援投手史上に残るシーズンになった。
言うまでもなく、ソフトバンクのデニス・サファテが初めて50セーブを記録したのだ。
<NPBのシーズンセーブ記録5傑>※サファテは2017年9月10日時点
1:サファテ 2017年(ソ)50セーブ(61試合2勝2敗3ホールド 61.0回 防御率0.89)
2:岩瀬仁紀 2005年(中)46セーブ(60試合1勝2敗2ホールド 57.1回 防御率1.88)
2:藤川球児 2007年(神)46セーブ(71試合5勝5敗6ホールド 83.0回 防御率1.63)
4:佐々木主浩 1998年(横)45セーブ(51試合1勝1敗56.0回 防御率0.64)
5:岩瀬仁紀 2007年(中)43セーブ(61試合2勝4敗3ホールド 59.0回 防御率2.44)
5:サファテ 2016年(ソ)43セーブ(64試合0勝7敗8ホールド 62.1回 防御率1.88)
サファテは昨年、パ・リーグ記録となる43セーブをマークしていたが、今年これを大きく更新した。NPBよりも19試合多いMLBでは62セーブのフランシスコ・ロドリゲスを筆頭に、50セーブ以上は14人いる。しかし55セーブ以上は4人だけ。
9月5日からの1週間で4セーブも稼いだ絶好調のサファテは、この勢いなら55セーブに乗せるのではないか。