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ミランを買収した中国資本は大丈夫?
新時代を祝う人、不信感を表す人。 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2017/04/19 17:00

ミランを買収した中国資本は大丈夫?新時代を祝う人、不信感を表す人。<Number Web> photograph by AFLO

アルゼンチンを破綻させたファンドのお金も。

 買収成立後、「信頼し続けてくれたベルルスコーニ氏とフィニンベスト社に大いに感謝したい」と述べた李の表情は、安堵と憔悴に満ちていた。彼の言葉は本音だろう。

 イタリア屈指の富豪であり、元首相でもあるベルルスコーニが自慢のミランを手放した売却劇を、現地メディアは大々的に取り上げた。その中で、経済紙『イル・ソーレ・24オーレ』は、「李勇鴻のミランにとって、真の戦いの場は金融市場だ」と論じている。

 買収総額は7億4000万ユーロ(約858億円)とされているが、実際はこれに、90億円近い今季の赤字や、来季に向けた補強資金が加算された。

 買収資金としてエリオット社から借り受けた3億ユーロ強の中には年11.5%もの高利が付いている資金があり、返済期限は18カ月後に設定されている。仮に返せない場合、ミランは彼らの手にわたる。国際金融界でエリオット社といえば、'14年夏にアルゼンチンを2度目の国家デフォルトに追い込んだことで有名だ。

 新経営陣は、できるだけ早く返済への金策を見つけ出す必要がある。

 李はかつてグループを組んだ投資家たちへ出資を呼びかけるだろうが、中国政府の人民元の国外流出を監視する目は厳しさを増す一方だ。となれば、李新会長は買収の真の目的である香港金融市場への上場への準備をなるだけ急ぐ必要がある。

 ようやく苦労して手に入れた名門ミランだが、喜んでばかりもいられないのだ。

実は新オーナーの個人資産はベルルスコーニの10分の1。

 李の個人資産は約5億ユーロとされている。

 フィニンベスト社に渡した資料によれば、業務用包装資材や鉱山経営、不動産事業などで財を成した金融ブローカーらしいが、10倍以上の資産を持つベルルスコーニがミランを泣く泣く手放したのに5億ユーロ程度でこの先やっていけるのか心許ない、という冷めた見方も現地にあることは否めない。

「李のバックボーンについては正直我々もまだよくわかっていないんだ。彼レベルの資産家は中国本土にはゴロゴロいる。多すぎて把握しきれない」

 ごった返すサン・シーロのプレスルームで知り合った中国最大級のポータルサイト「網易」のスポーツ記者、王猛に新オーナーの国内評を尋ねてみたら、冷静な反応が返ってきた。

 王記者には、欧州屈指の名門クラブを買収した同胞の成功を手放しで褒め称える素振りは微塵もなかった。むしろ、南京の家電王からインテルのオーナーとなった張近東とちがい、李に中国政界との繋がりが薄い様子を訝しんでいる。

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