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PRIDEとRIZINの生き証人、川尻達也。
グレイシー戦敗北の痛みと重み。

posted2017/01/10 11:00

 
PRIDEとRIZINの生き証人、川尻達也。グレイシー戦敗北の痛みと重み。<Number Web> photograph by Susumu Nagao

勝負に出た踏みつけが結果的には裏目となった。だがそのアグレッシブな闘争心こそ、ファンが川尻に魅了される理由である。

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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Susumu Nagao

 格闘技に限らず、あらゆるスポーツの醍醐味の一つは“スター誕生”にある。とてつもないポテンシャルを持った選手がいきなり現れ、これまでの記録や常識を次々と打ち破って見慣れた風景を一変させてしまうのだ。

 2015年のRIZINでいえば、新生K-1の武尊やシュートボクシングからMMAデビューを果たしたRENAがそうだった。2016年の年末大会(12月29日・31日、さいたまスーパーアリーナ)では、那須川天心が多くの観客、視聴者に衝撃を与えている。

 キックボクシング無敗の18歳は“メジャーデビュー”となる29日のMMA初戦でTKO勝利。さらにその場で連戦をアピールし、大晦日のリングでも勝ち、じつに3日で2連勝。それも、1戦目がパウンド、2戦目がアームトライアングルチョークと、いずれも寝技でのフィニッシュという非凡さである。

「誰もやったことのないことがしたい」

「キックでもMMAでも未来を作っていきます」

 そう語った那須川は、一夜明け記者会見で無差別級GP優勝者ミルコ・クロコップとのツーショットも実現させた。まさに、大会の主役の1人となったわけだ。

36歳・北岡悟は勝利後、ファンへの感謝を口にした。

 スターが生まれる一方で、新たなチャンスにかけるベテランもいる。彼らの魅力、その中心にあるのはファンと共有してきた歴史だ。

 29日の第1試合、ダロン・クルックシャンクの打撃に耐え抜いて劇的な一本勝ちを掴んだ北岡悟は36歳。リング上でマイクを握ると、こう言った。

「この10年間、総合格闘技が好きで見続けてくれたみなさん、ありがとう」

 格闘技がブームであろうがなかろうが、北岡は格闘技で食ってきた。熱心な格闘技ファンが、それを見続けてきた。

【次ページ】 PRIDE、戦極やDREAMが消滅しても来てくれた“上客”。

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