オリンピックへの道BACK NUMBER
女子ジャンプは高梨沙羅だけじゃない。
今季絶好調、伊藤有希の“五輪観”。
posted2017/01/05 11:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Shino Seki
また1つ、階段を上がったのかもしれない。
ノルウェー・リレハンメルで開幕したノルディックスキー・ジャンプ女子のワールドカップで、2大会ともに2位と表彰台に上がった。続く3、4戦こそ表彰台は逃したが、総合順位で3位につける。帰国後、12月18日には吉田杯で優勝。伊藤有希は幸先のよいスタートを切り、年内の大会を終えた。
伊藤は22歳だが、キャリアは長い。その名が知られることになったのは小学6年生だった2007年のこと。現在のワールドカップの前身にあたる国際大会で3位になったのである。大会史上最年少で表彰台に上がったことは大々的に報じられた。
中学2年生の2009年には、世界選手権に出場。2011年に世界ジュニア選手権で銅メダルを獲得するなど、常に日本代表として活躍してきた。
高校時代は国際大会で2桁順位が増えるなど苦しい時期が続いた。そこから脱したのは2013年、土屋ホームに入社した後だ。監督はあの葛西紀明。高橋大斗ら日本代表で活躍してきた選手たちもいる中でのトレーニングで復調した。
崩れたときの手立てを徐々に手に入れたシーズン。
「私に合ったアドバイスを、監督もコーチも、みんながしてくださるんです」
ワールドカップ総合成績で見れば、2012-2013年は18位だったが、2013-2014年シーズンは3位、2014-2015年シーズンは5位と向上する。このシーズンの世界選手権では、カリーナ・フォクト(ドイツ)に次ぐ2位で銀メダルを獲得した。
世界の上位を争う位置で戦い続けてきた伊藤だったが、昨シーズン、総合8位で足踏みする。
「いろいろ試した部分もありました」
その影響もあっただろう、苦しいシーズンを過ごすことになった。だが必ずしもマイナスばかりではなかった。
「調子が上がらない中で試行錯誤しながら飛んでいましたが、そのおかげで、こういう風に崩れたときはこれを使えばいいんだとか、引き出しが増えました。例えば、アプローチのポジションがずれたら、こうしてみるといいとか」