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大学ゴルフ部の仲間が気にする男。
岩田寛の「可愛さ」を知ってますか? 

text by

舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

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photograph bySonoko Funakoshi

posted2016/11/03 08:00

大学ゴルフ部の仲間が気にする男。岩田寛の「可愛さ」を知ってますか?<Number Web> photograph by Sonoko Funakoshi

10位以内に入ると、出場可能になる試合が増える。岩田寛にとって、その1試合ずつが大きなチャンスとなる。

フルシードのチャンスを「不運」で逃した昨季。

 準シード資格で今季を迎えた岩田が出場できる試合は、現状では10試合前後と見られている。サンダーソン・ファームズ選手権はそんな彼にとって今季の初戦。初日から好プレーを続けた岩田は、首位に3打差の10位で最終日を迎えようとしていた。

 大会の舞台となったミシシッピ州のカントリークラブ・オブ・ジャクソンはスコアが伸びるコースゆえ、逆転優勝は大いに起こりうる状況。岩田が初優勝を遂げるとすれば、その晴れ姿を絶対に見逃したくない。前夜の夜行便に飛び乗り、アメリカ大陸を横断しながら現地へ駆け付けた私の胸の中で、その気持ちは強かった。だが、勝ち負けはさておき、岩田の本音を聞きたいという想いもあった。

 岩田の本音――昨季のシーズンエンドのファイナル4戦で遭遇してしまった「不運」に対する本音のことだ。

 3試合目を終えて36位だった岩田は、4試合目のウェブドットコムツアー選手権で上位入りしてトップ25入りを果たそうと必死だった。マネージャーの乾芽衣によれば、練習日の段階で調子も仕上がりも「すごい良かったんですよ。それなのに水曜日の夕方に急に選手がみんな集められて、大会は中止だって言われて……寛さんもすごいショック受けてて」。

 米南東部に接近していたハリケーン・マシューの危険性を考慮して米ツアーは最終戦を中止と決めた。戦うことなくフルシードのチャンスを封じられる結果になったことを、岩田はどう思っているのか。その答えを彼の口から聞いてみたかった。

昨季なら崩れそうな場面で、集中力を維持した。

 ある程度、その不運を受け入れ、咀嚼していなければ、いいゴルフをすることなどできないだろう。だが、岩田は初日から好発進を切って上位を維持。最終日も前半で1つスコアを伸ばすと後半も次々にバーディーを重ね、「14番で一瞬(首位に)並んだと思った。(優勝は)あるかなと思った」。

 しかし、15番からの上がり4ホールはティショットがすべて右に曲がり、パーを拾うのが精一杯。スコアを伸ばし切れず、初優勝を逃して5位に終わった。だが、その4ホールで打つたびに右へ飛び出したティショットの後も、岩田は激昂することなく、集中力を保った。執拗にパーを拾い続け、ピンチに負けず、ボギーを叩かなかった。崩れなかった。いや、崩さなかった。

 その姿は、昨季の岩田とは何かが違って見えた。

【次ページ】 松山英樹のキャディから勧められた1冊の本。

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