野球善哉BACK NUMBER
甲子園の“エース酷使”解決策。
高校野球にリーグ戦の導入を!
posted2016/08/29 11:50
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Hideki Sugiyama
「なかなか、2人の好投手を作るのは、簡単じゃないですよ」
そう語ったのは木更津総合の指揮官・五島卓道監督だった。
この夏の甲子園を振り返って改めて感じたのは、複数投手を育成していく難しさだ。
大会前に「BIG3」と名付けられた寺島成輝(履正社)、藤平尚真(横浜)、高橋昂也(花咲徳栄)の3人は先発を回避した試合で2番手投手が打ち込まれ、大会を去ることになった。
秀岳館や盛岡大付、鳴門など複数投手で大会に臨むチームが増えてきているとはいえ、その戦い方が成熟しているとはいいがたい。結果的に振り返れば、ほぼ1人で投げぬいてきた、作新学院・今井達也と北海・大西健斗が決勝のマウンドに立ったのだ。
勝たないといけない試合はエースに任せざるを得ない。
もっとも、投手1人で戦ってきたチームがすべて盤石な戦いを見せたわけではない。
五島が率いた木更津総合は、エース・早川隆久の安定感のあるピッチングを軸とした堅いディフェンス力で2試合を勝ち上がってベスト8に進出。3回戦の広島新庄との試合では、同じく1人で投げぬいてきたエース堀瑞輝と投げ合い、早川は見事な完封劇を見せた。
しかし、連投となった翌日の準々決勝の作新学院戦で、早川は疲れからいつものピッチングを見せることができなかった。試合後の五島には「連投回避」の質問がぶつけられたが、それが冒頭の言葉に表れている。
五島の考えはおそらく高校野球の少数派ではない。
「勝たないといけない試合が目の前にあるわけですから、どうしてもエースに任せる」とも五島は語っているが、高校野球の現状、そうならざるを得ない事実に目を向けなければいけない。
日本高野連は複数投手で臨むことを推奨しているが、ここで重要なのは実際に、複数の投手が育成される環境を作っているかどうかだ。