大逆転3階級金メダルの偉業は「奇跡」ではない。

　登坂、伊調、土性。試合内容はそれぞれだが、終盤に劇的な逆転勝利を果たしたという点では一緒だ。

　栄チームリーダーは「伊調は難しいと思ったところに相手が入って来てくれた。土性も残り30秒で執念で得意のタックルに成功した。試合ではやはり練習量や6分間戦う中での技術や勝負になる。瞬発力や瞬間的なポイントの取り方では相手が上回るかもしれないが、6分間での勝敗なら日本が上だった」

　至学館大など所属チームでいかに鍛え上げていくか、そこが最も重要なことだと栄チームリーダーは強調する。

「最後まで諦めるなといつも言ってきた。土性には『ちびっ子のときに吉田栄勝さん(吉田沙保里の父)に教わったタックルを忘れるな』と言って送り出した。精神的な部分と体力的な部分が最後に出た」

　各地域、各年代で情熱を燃やす指導者がいることや、所属チームで行なう日々の追い込み練習、そして、吉田沙保里や伊調馨といった憧れの存在。大逆転での3階級制覇は奇跡ではなかった。