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前田健太とダラス・カイケル。
~サイ・ヤング賞投手との共通点~

posted2016/03/12 10:30

 
前田健太とダラス・カイケル。~サイ・ヤング賞投手との共通点~<Number Web> photograph by Getty Images

8年契約という異例の長期契約でドジャース入りした前田健太。メジャーに適応する時間はたっぷりある。

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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 オープン戦とはいえ、前田健太が上々の滑り出しを見せた。3月5日の対ダイヤモンドバックス戦に先発し、2回を投げて28球、無失点、被安打1の結果を残したのだ。

 ま、春季トレーニングはまだまだ先が長いのだから、ここで一喜一憂することはない。前田自身も、今後の登板で課題をいろいろ見つけていきたいと発言しているくらいで、われわれ観客がひいきの引き倒しをはじめても仕方ない。

 ただ、この28球は、見ていてなかなか楽しかった。レーダーガンを準備していなかったのか、球速はテレビで表示されなかったが、日本のスポーツ紙は「最高150キロ」と報じた。どうだろうか。見たところは90マイル前半という感じで、剛速球投手の印象は与えられなかった。

 むしろ印象的だったのは、すぐれた制球力だ。打者6人(二塁打は打たれたが、すぐに盗塁死してくれた)に対して、初球はすべてストライク。そのあとも無駄な遊び球を投げず、早々とツーストライクを取っていたのは好ましかった。球種は、直球、ツーシーム、カーヴ、スライダー、チェンジアップの5つ。なかでも切れていたのは、スライダーだった。とくに6番打者ブランドン・ドゥルーリーに対して、ツーストライクを取ったあとの投球。外に投げたスライダー(ハーフスウィングだった)をボールと判定された直後、前田はもう1球、やや内側の外角低目一杯にずばりとスライダーを投げ込んだ。ドゥルーリーのバットはぴくりとも動かない。これで、この日2個目の三振。

この討ち取り方は、だれかに似ている……。

 こういう討ち取り方は、だれかに似ていないか。テレビの画面を見ながら、私は思わず考え込んでしまった。数秒後、自分でも意外な名前が浮かんだ。ダラス・カイケル。

 カイケルは2015年、ア・リーグのサイ・ヤング賞を受けた投手だ。アストロズのエース左腕で、前田と同じ1988年生まれ。2014年シーズンから急成長し、'15年には20勝をあげた。ゴールドグラヴを2度('14年と'15年)獲得していることも特記しておきたい。

 カイケルの球は速くない。平均球速は145キロを下回る。アーロン・ハラングやCCサバシアと同程度といえばわかりやすいか。ただ、ピークをとうに過ぎたハラングやサバシアが4点台後半の防御率に苦しんでいるのに対し、カイケルは昨年2.48の防御率を残した。これはなぜか。

【次ページ】 速い球が投げられなければ、スピードを変えろ。

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