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清水恭孝監督と立川談志の共通点。
國學院久我山が貫く「超現実主義」。

posted2016/01/08 10:40

 
清水恭孝監督と立川談志の共通点。國學院久我山が貫く「超現実主義」。<Number Web> photograph by Kyodo News

國學院久我山は毎年東京大学にも合格者を出す進学校であり、高校サッカー界で異色の存在だ。

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茂野聡士

茂野聡士Satoshi Shigeno

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Kyodo News

「もし日本代表クラスの実力があっても成績が“オール1”の選手では、うちのサッカー部には絶対に入れません」(清水恭孝監督)

 高いレベルでの文武両道、“最高学府(つまり、東大卒)のJリーガー”輩出を目標とする國學院久我山(東京A)。都大会を3年連続で制すると同時に、受験を経て大学で活躍する選手も多く存在し、高校サッカー界で異彩を放っている。

 高い志は、ピッチ内でも貫かれる。複数選手が連動する攻撃的なスタイルは、高校サッカーファンにとってお馴染みとなった。そして今年の選手権では、過去最高成績だった準々決勝の壁を突破し、ベスト4へと名を連ねた。

 明晰な頭脳と、精密に磨き上げた技術を生かしたパスサッカー。そのイメージが浸透しつつあるなかで、清水監督はこう語る。

「今年の選手たちは、特に辛抱強いんです」

 確かに準々決勝までのスコアを見ると、1-0、2-2(PK3-1)、2-1、1-0。もちろん久我山らしいパスワークは随所に見られるが、今大会は勝負強さが目立っている。

残り5分から2点差を追いつかれPK戦に。

 たとえば2回戦・明秀日立戦も、簡単には勝利をつかめなかった試合だった。後半にFW澁谷雅也が先制点を奪えば、DF山本研が左サイド45度の直接FKを鮮やかに叩き込む。残り5分を切った時点で2-0。勝負あったかに思えた。

 しかし、好事魔多し。「2点目で気が緩んでしまったところはありました」と試合後に選手が語ったとおり、2点目の直後に1点を返される。そして終了間際にはセットプレーからの混戦で再びゴールを許し、PK戦へと突入した。同点弾はゴールライン上でクリアしたように見える際どいものだったこともあって、流れは完全に明秀日立にあるかと思われた。しかし久我山イレブンは気持ちを切り替え、キッカー3人すべてがPKを成功。そして1年生GK平田周が3本止め、今度こそ勝利をものにした。

「もし『最後のゴール、入ってなかったよな』って言ってみても、ゴールという判定が出たんですから、PK戦になったというのがそれがすべてなんです。だからこそ腹をくくったというか……よく切り替えてくれたと思います」

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