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松田宣浩が踏み出すべき最初の一歩。
メジャー挑戦の“夢”と“ビジネス”。 

text by

ナガオ勝司

ナガオ勝司Katsushi Nagao

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photograph byNanae Susuki

posted2015/11/18 10:40

松田宣浩が踏み出すべき最初の一歩。メジャー挑戦の“夢”と“ビジネス”。<Number Web> photograph by Nanae Susuki

海外FAを宣言した松田宣浩。2015年シーズンは35本塁打を記録。プレミア12でも1本塁打ほか、活躍を見せる。

決して高くはなかった公開トライアウトでの評価。

 当時29歳の井口が自由契約になってメジャー挑戦を表明したのは2004年のシーズン終了後。その時点でメジャーにいた日本人内野手は、当時メッツの松井稼頭央(現東北楽天)ただ一人だった。日本人内野手への評価がはっきりと定まっていなかった時代であり、今オフの「マツダ」のようにメジャーの現場で「イグチ」の名を知る者は少なかった。

 そこで井口や彼の代理人がしたこと。いや、しなければならなかったこと。それは“公開トライアウト”だった。井口は自ら米国に出向いて、各球団のスカウトの前で打撃や守備を披露した。球団によって評価は様々だったが、決して高くはなく、「控え内野手」としての評価しかしなかった球団もあるぐらいだった。

 ホワイトソックスの評価は「打撃はコンタクトに優れ、力もある。足も使えて守備も安定している」というもの。そこにレギュラー・ポジションの確約はなく、契約も3年470万ドル(三年目は球団オプションで単年330万ドル)に抑えられた。1ドル120円なら(以下同様)平均年俸2億8200万円。2003年の暮れに松井稼がメッツと交わした3年2100万ドル、平均8億4000万円に比べれば随分と安かった。

 それでも井口はホワイトソックスと契約し、「メジャーでプレーしたい」という“夢”をかなえた。そして、初年からチームの中心選手となって優勝に貢献し、メジャー4年目にはサンディエゴ・パドレスと単年385万ドル、4億6200万円で契約している。

驚くほど大きいMLBとNPBの年俸格差。

 メジャーリーグと日本のプロ野球の年俸格差は、驚くほど大きい。平均年俸はメジャーの約420万ドル=1ドル120円で約5億400万円に対して、日本の3811万円(労組日本プロ野球選手会の今年5月の発表。外国人選手、育成選手、出来高払いは除く)。その格差、実に13倍以上である。

 もちろん、メジャーには年俸30億円を超えるスター選手もいるわけで、平均年俸だけで両国のプロ野球の格差を比較するわけにはいかない。しかし、たとえばロイヤルズ時代の青木宣親外野手の元同僚オマー・インファンテ二塁手のように、打撃タイトルを狙うような選手でなくとも、32歳になる年にFAで4年3025万ドルの契約を勝ち取れるのがメジャーリーグである。

 そういう事実を考えれば、日本でFAになったプロ野球選手が「メジャリーグでの自分の評価を知りたい」と思うのはとても自然なことだ。日本のプロ野球でエース級投手や主力打者なら尚更、主力級じゃなくとも「俺はメジャーで通用する」という確信があるのなら、「メジャー挑戦」してみる価値はある。

 肝心なのは、その「評価」だ。

【次ページ】 32歳での「メジャー挑戦」の難しい部分は?

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