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昨季のスタメンが10人残るバルサ。
唯一の悩みは、2人が争う正GKの座。 

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豊福晋

豊福晋Shin Toyofuku

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posted2015/08/08 10:40

昨季のスタメンが10人残るバルサ。唯一の悩みは、2人が争う正GKの座。<Number Web> photograph by AFLO

後方からのポゼッションには、フィールドプレーヤーに遜色ないテア・シュテゲンの足元スキルが活躍する。バルデスも、同じ技術でバルサのゴールに君臨したGKだった。

コーチング、至近距離の反応ではブラボに一日の長が。

 この攻撃性、つなぐことに対する執着は、ブラボとのスタイルにおける最大の差だ。

 後半途中から出場したブラボの持ち味は足元ではない。相手につめられた時には、大きく外に蹴りだした場面もあった。

 一方で、もちろんブラボが優れている部分もある。コーチングだ。

 後半から出場すると、大声でピケらCB陣に指示を出す。9万を超える観客の大歓声の中でも、3階席までその声が届いてきたくらいだ。コーチングによるラインの作り方や修正、味方の集中力の維持などにおいては豊富な経験がものをいうのだろう、ブラボが一枚も二枚も上手だ。至近距離からの反応にも抜群のものがあり、昨季のリーガ最少失点は彼がいなければ成し遂げられなかった。

 しかし現在のバルサのスタイル、そして将来を考えると、よりチームに適しているのはテア・シュテゲンだろう。

 現バルサの失点の多くは、カウンターからサイドやCBの裏を突かれてのもの。縦に強く、スペースカバーの意識の強いテア・シュテゲンの強みが生きやすい。

 また現在は多くのチームが、バルサのゴールキーパーにボールが渡った際に、3人から4人でペナルティエリアに詰めてバルサGKに大きく蹴らせ、中盤での空中戦に誘導しセカンドボールを拾う、というバルサ対策を敷いている。この点においても、詰められてもダイレクトで左右に散らせる彼の存在は大きい。

継続的な成功に破壊が必要なのだとすれば……。

 23歳のテア・シュテゲンを早めに正GKに置くメリットも大きい。前任者のビクトル・バルデスは、21歳でバルサの正GKになり11年間ゴールマウスを守り続けた。最後尾の安定は、時代を築くためには欠かせない。

 バルサはここまでプレシーズンの4試合で8失点を喫した。プレシーズンにおいて数字は重要ではないが、ルイス・エンリケは失点を強く嫌い、得点よりもむしろ失点に気を使っている。

 攻撃は基本的にトリデンテの個性と創造性に任せており、試合中にもベンチから3人への攻撃の指示はほとんどない。彼らに可能な限り自由にやらせることが最も重要だと考えているのだろう。

 今季も、バルサはトリデンテが鍵となるのは間違いない。しかし指揮官が今考えているのは、3人とは最も遠いポジションなのである。

 テア・シュテゲンかブラボか。

 勝ち続けるためにあえて破壊をもたらすことが必要なのであれば、最後のピースはトリデンテから最も離れた、ゴールマウスに残されている。

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