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骨盤を前傾、軸足を抜くトラップ!?
動き方を究める「中西塾」に潜入。 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

PROFILE

photograph byTakuya Sugiyama

posted2015/05/25 10:30

骨盤を前傾、軸足を抜くトラップ!?動き方を究める「中西塾」に潜入。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

生物学を専門とする名誉教授を父にもつ中西は、昨年から桐蔭横浜大学スポーツ健康政策学部の客員教授に就任。骨や筋肉で身体全体がつながっているという観点から、新たな指導法に取り組んでいる。

メッシのシュートにGKが一歩も動けない理由。

「軸足ドリブル」には足からボールが離れづらくなるだけでなく、シュートのタイミングという点でも大きなメリットがある。

 メッシがわかりやすいので、左利きの場合を考えよう。

 メッシが右サイドから切れ込んでいくときに、まさに軸足である右足で体を動かし、左足の外側でボールを運んでいる(アウト持ち出し)。

 メッシがシュートシーンですごいのは、軸足(右足)を地につけたとき、同時に蹴り足(左足)を後ろに振り上げていることだ。通常なら(1)ボールを左足で蹴って、(2)ボールに追いつき、(3)軸足を踏み込んで、(4)シュートといった手順になる。タイミングで言えば、1、2、3、4だ。一方、メッシは軸足を地面につけたときにすでに蹴り足を振り上げているので、余計なステップを踏まずに、1、2のタイミングで打つことができる。だからメッシのシュートに対して、GKが一歩も動けないことが多いのだ。軸足主導だからこそ、蹴り足は余分な力を使わず自由な状態にでき、軸足を踏み込んだ瞬間に振り上げることができる。

 イン持ち出しのドリブルから、最後に軸足を替えてシュートを打つ技術もあるのだが、それは次の機会に紹介しよう。

ボールが当たる瞬間に、逆足を浮かせるトラップ。

 トラップに関しても、独自の理論がある。「軸足を抜く」という方法だ。

「右足でボールを止めるとしましょう。ヨーロッパの選手を注意深く観察するとわかるんですが、右足にボールが当たる瞬間、軸足である左足をすっと浮かしているんですよ。大袈裟に言えば、軸足に乗っていた重心を、止める方の足に移す感じです。そうすると見事にその場にボールが止まるんです」

 この原理は、宙に吊るした丸太を思い浮かべるとわかりやすい。

「丸太の芯にボールを当てたら、丸太は真後ろにぽーんと動きますが、ボールの方は真下に落ちますよね。軸足を抜くことで股関節が吊られた丸太のように自由になり、ボールがその場に落ちます。これを身につけると、どんなに強いパスが来ても、正確に止められるようになります」

【次ページ】 大人が本気で蹴ったパスを、子供が軽々止める。

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中西哲生

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