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梅野源治が直面したムエタイ“神の階級”の壁。
~軽量級最強を逃した差とは?~ 

text by

布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

PROFILE

photograph bySusumu Nagao

posted2015/05/10 10:30

試合後リング上で号泣した梅野。5月10日に再びルンピニースタジアム1位の相手に挑む。

試合後リング上で号泣した梅野。5月10日に再びルンピニースタジアム1位の相手に挑む。

 かつてこれほど激しいムエタイがあっただろうか。そう言いたくなるほど、梅野源治がペットモラコット・ウォー・サンプラパイに挑戦したルンピニースタジアム認定スーパーフェザー級タイトルマッチ(4月19日・東京)は興奮とスリルに満ち溢れた一戦だった。

“立ち技最強”と呼ばれて久しいムエタイはいくつもの世界タイトルが存在する。梅野もふたつの「世界」を持っているが、ムエタイにはそれ以上の権威を持つ王座が存在する。タイの首都バンコクにある、ルンピニーとラジャダムナンの両スタジアムがそれぞれ認定する王座だ。

 とりわけルンピニーの方は過去に王者になった外国人選手は2名のみ。選手層が豊富な“神の階級”とすら言われる60kg以下の軽量級に至っては皆無だ。

 それでも、関係者は梅野に大きな期待を抱いた。それはそうだろう。これまでに幾人もの二大スタジアムの現役ランカーや元王者を次々と撃破。ムエタイでは「外国人選手最大の弱点」といわれる首相撲の攻防になっても、一歩も引かないスキルを持ち合わせていたのだから。

1つのスリップダウンさえ命取りになってしまう攻防。

 案の定、首相撲を得意中の得意とする王者との組みの攻防になっても、挑戦者が一方的に守勢に回る場面はなかった。逆に優勢に進めた攻防もあったほどだ。勝負の分かれ目となったのは最終回(5R)2分過ぎ、ペットモラコットが覆い被さるようにして梅野からスリップダウンを奪った場面だった。シーソーゲームになればなるほど、ほんのわずかなミスでも命取りになってしまうのだ。

 だからといって、梅野に勝機がなかったとは思えない。この日のジャッジはルンピニーから派遣された公式審判員。つまりペットモラコットにとって闘う舞台はアウェーでありながら、ジャッジはホームという特殊な環境だった。彼らが第三国の観客にはわからない勝負の肝として、梅野のスリップを待っていたという考えはうがった見方になるだろうか。

 試合後、梅野は人目も憚らずリング上で号泣した。そして、潔く敗北を認めた。

「あそこでこかされちゃいけないことはわかっていた。自分が弱かった」

 興奮覚めやらぬ観客席からは「惜しい、あと一歩だったのに」という声も聞かれた。しかし、ムエタイではその一歩が途方もなく遠い。

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